わけもわからぬままに口走った言葉から始まった。
「義」
そこから始まった私の言葉遊び。義を貫くだとか、三成殿との友情に生きるだとか。
三成殿は、まるで自分の死を予感していたように、私の言葉遊びを糾弾した。
私は突如、手綱を失った憐れな武人となっていた。いまやいまやと振り落とされそうになることを覚悟した瞬間、抱え上げられ、地面に根をはった。
そのまま私は太陽を浴び、足元をより堅固に、揺るぎないものとした。
ようやくひとりで立てたのに、その姿を見てほしかったのに、私を見ていた眼は、ゆっくりと閉じた。
馬蹄が轟き、大地が揺れる。
いとも簡単にもみくちゃに凌辱の限りをつくされた、義。
雨が降る。
懺悔と、悔恨と、屈辱、未練、圧迫、慟哭、期待、未練、優劣、絶望、憎悪、高揚、不安、慢心、畏怖、快哉、驚愕、数えきれないほどの感情がないまぜになって、涙とともに義を濡らす。
それでも私は立っている。
しけった義はどんなに無理矢理折ろうとしても、折れない。ただ頑固に曲がるだけ。
わたしの志は、折れない。
一度決めたことに揺らいでいてはいられない。私を見てくださったたくさんの眼に、叱咤されてしまう。
それに、私はひとりではない。
ひとりで立っていたわけではないのだ。慶次殿に、兼続殿もいる。
いつまでも根をはっていてはいけない。進まねばならない。
隣には父上も、兼続殿も、慶次殿もいる。きっと、三成殿も島殿もいらっしゃる。お館様も、いらっしゃるかもしれない。
だから、私は進める。
私ひとりでは出来ぬことも、皆がいれば、必ず。





「馬から墜ちた男はどんな表情で笑い、喋り、戦ったか?」