「いけませんなア。走り回るのが好きなんですか? 別にそうならかまやしませんがね、殿がそうちょこまかあっちいったりこっちいったりすると、少し、ほんのちいとばかし実質的総大将、ってもんの威厳が落ちるんじゃないですかね」
「俺がやらねばだれがやる。今やたぬきの利に群がる大名は数知れぬ。誰も信用ならん。俺がつなぎになるしかなかろう。それに、俺の威厳というものは二の次ではあるまいか? なぜなら、故太閤殿下への御恩、そして御子秀頼様の御為、豊家万代の御為であることがなによりだからだ。俺の威厳よりも、秀頼様の御威光のことのほうが大事だ」
「その姿勢、感心しませんなア。秀頼様はまだお若い。それに、戦場で采配を奮うは事実、殿であり、秀頼様ではない。殿があまりにそのような、軽率な立場にあられれば諸将への示しがつきません」
「ならば、誰がいったいするというのだ」
「殿はおひとりのつもりか」
「……ゆくぞ。佐和山へ。いよいよ挙兵だ」


(半ば寄せ集めの軍。されど、東軍に勝るとも劣らぬ量。さて、いくつが本物だろうか)












08/12