ひとを斬ることに躊躇いを持つなど、いつのまにか忘れていた。
多分、麻痺してしまった。
そういうものなのだ。斬らねば斬られてしまう時代なのだ。そうするしか、俺には無いのだ。
俺は戦闘を不得手と思われている節があるようだ。
三成風情に戦ができるのか、と。
たしかに、武辺者に比べれば腕は細めだし、顔はいい(自分で言うものじゃないと左近によく言われる)。
だが、こう見えても俺はそこそこに自信がある。あくまで、そこそこに。ああ、俺はなんて謙虚なのだ。
たしかに、左近と力押しのつばぜり合いになったら不利かもしれぬが、それでも人並みにはこなすことができるはずだ。

いつのまにか、こんなことを平気で考えることができるようになってしまっていた。
単なる仮定の話であろうとも、左近と対峙することを想像する自分がいる。

違う。
俺が想像すべきは、いつか見た夢のような、共に、誰もかれもが笑って暮らせる世のはずなのに。

俺は、どうしてこうなってしまったのだ。
(そういう時代だと割り切れているうちは、まだいい)












08/12