不謹慎な話、俺は左近が死んだと聞いて、胸が痛む思いももちろんあったのだがそれよりも奇妙な腹立ちとほんの少しの喜の感情があったように思う。


「へえ、どうしてですか?」
「いやなに、俺の左近を勝手に殺しやがって、と、俺の左近はもう誰にも取られない、と」
「それはそれは、左近も喜んでいいのやらそうでないのやら、判断しかねますよ」
「どうだろうな」
「でも一番は、あれだな」
「どれで?」
「首が見つからないとのことだ。左近の死に顔は誰にも見せない」
「ははっ、嫉妬深いお方だ」
「だめか?」
「そうですねえ。左近としては、殿の死に顔が大衆にさらされたことが、ちょっと」
「そうか」



あまりの寒さに目が覚める。
つま先にはほとんど感覚がない。火が消えている。指先が少し変色している。眠い。
まだ眠い。睡余が憎い。
睡りたい。
俺は睡りたい。
睡りたいのに、人の足音がする。
現実逃避なんて、ばかばかしい。
睡りたいだけだ。夢を見たいだけだ。








10/11
(君:睡夢 僕:睡余)