07:保健室に居るから
さことの気味SSSS
「左近、空は青いのはなぜだ」
「いきなりどうしたんですか」
「昔教わったような気がするが、思い出せん」
「空は、確か海の色が反射してるんじゃなかったですっけ?」
「バカモノ。海は空の色だ」
「あー、そろそろ年ですかねえ」
「まったく。モミアゲがちっとも役に立ってないではないか」
「そもそも役に立つものじゃありません」
「左近は使えないな」
「いきなり俺に致命傷を負わせて楽しいですか」
「…思い出せんな」
「思い出す必要あるんですか?」
「知的探究心の欲求を満たすのだ」
「別に今すぐ必要なわけないんですから。家帰って調べるなりなんなりすればいいじゃないですか」
「それはいかん」
「なぜですか」
「家に帰ってからだと図書館に行く時間が無くなってしまう」
「じゃあ帰り道に」
「ないのだ」
「もう」
「ふ、むくれるな」
「ちょっと不意打ちで微笑まれても左近が知らないことは教えることはできませんぞ」
「どうしてそんなにひねくれてるのだ」
「別に」
「…あ」
「思い出しました?」
「そうだ、確か…。地球を覆う空気は、完全に太陽の光を通さない。それで…、なんだったか」
「空気って、空気ですか?」
「左近は空気をいくつ知っているのだ」
「空気って透明のヤツですよね」
「ああ。太陽の光が空気の中を進む際に分子にぶつかって乱反射する。曇りの日、空を見上げると雲が真っ白だろう。あれは水滴にあたった光の乱反射だ」
「これまた小難しいお話ですね」
「これでも噛み砕いているんだがな」
「それで?どうして青いんです?それだけじゃわかりませんよ」
「…なぜか、空気の分子に光が当たったとき、青っぽい光が赤っぽい光より散乱されやすいらしいのだ。青っぽい光が乱反射しやすいから、空は青いのだ」
「夕日は?」
「それは太陽が沈んで斜めに光が入ってくるからだろう。極論だが、地球に空気がなければ空は真っ白なのだ」
「そうですね」
「海も透明で、もしかしたらクジラとかよく見えるかもな」
「見てみたいですねえ」
「…ああ。だが、空気が無ければ生きられぬ。でも、見てみたいぞ」
「へえ、ありがとうございます」
「礼には及ばぬ」
「でもわかったような、わからないような」
「俺もいまいち理解しきれてない」
「そりゃダメじゃないですか」
「ダメとかいうな。俺はもう少し考えてくる」
「へ?どこ行くんですか?」
「保健室にいるから」
「は?ちょ、教師の目の前でサボるんじゃない!」