30:あの時の僕らは、
カオス
三「飲めーっ!!」
兼「うおおおおお!」
幸「いよっ、いい飲みっぷり!」
慶「かぶいてるぜええええ」
左「ダメです、未成年は飲んじゃいけません。ダメです。ダメですってば」
三「左近、飲め飲め」
幸「あ、小太郎はちょっとだけですよ?」
風「くく……」
左「なんで中庭に住み着く捨て風魔まで連れてきたんですか」
三「俺が卒業したら、誰も世話をしないだろうと思ってな。引き取ることにした」
風「風魔は気ままに生きるのだ」
三「はいはいよしよしよし」ごろごろ
風「クク……たまにはいいだろう……」
左(手懐けたっ)
ね「みっちゃーん!」
秀「卒業」
「「おめでとーっ!」」
ばたーん
三「おっ、ねね様……! なぜここに……!」
ね「やあねえ、子どもの晴れ舞台を見にこない親がいるかい?」
秀「卒業生答辞……、わしはもう感動で泣きそうじゃったぞ!」
左(『送辞、嬉しく思う』だけだったのに)
慶「いやあ、無事に卒業できてよかったなあ?」
三「当たり前だ。卒業できぬはずがあるまい」
兼「そうだぞ」
風「我も卒業するぞ」
ね「あら、何年留年したんだい?」
風「……」
幸「……うわああああ!」
左「どっ、どうしました……?」
幸「ずっ、ずぇ、ずぇんぱいがごぞつぎょお……、うああ……わだしは、さびじいでつ……」
兼「幸村……、安心しろ。私の代わりに山犬を留年させるから……」
左「なにを勝手なこと言っているんですか」
秀「わしもおるぞ、幸村」
幸「うっ、ぐすっ」
三「幸村、飲みすぎだ。取り上げ」
幸「いやだあああ! 飲まないとやってらんないです!」
慶「おい幸村……悪酔いか?」
ね「……あ! こどもがお酒なんて飲んで、ダメでしょ! お仕置きだよ!」
幸「お酒なんて飲んでいません、こどものビールです」
左(それで酔えるひともなんだかすごいな)
ね「あらそうなの? あたしも一口もらってもいいかい?」
三「おねね様はおばさんなのでだm
めきょっ
ね「ありがとう、もらうわね!」
三「……」
秀「三成、強く育つんじゃぞ!」
三「あんな家出てってやる!」
*
「なぜ、楽しく、ちょっぴり切ないはずの卒業祝いがあんなことになったかっていうとだな。おねね様と秀吉様がやってきたところからおかしくなったのだ」
「はあ」
「聞いているのか、左近」
「聞いていますよ」
「あのときの俺は少しテンションがおかしかった」
「でしょうねえ。ホントに家出しちゃうんですもん」
「でも家出してまだ二時間くらいしか経っていないしすぐ戻るのはいやだから、左近の家に来た」
「知ってますよ」
「ところで」
「はい」
「……せっかくの卒業祝いだったのだが、挨拶もうやむやに解散してしまった」
「寂しいんですか?」
「別に」
「寂しいんだ」
「別に。……ただ、多分、しばらく会わなくなるから」
「寂しいなら寂しいって言っちゃえば楽じゃないですか。今は左近しかいないんですよー?」
「ふん」
「いきなり意地っ張りになっちゃってもう」
「あ、小太郎のごはん……、おねね様が作ってくれるか」
「世話焼きですからねえ。『ひどい顔色しちゃってもう』なんて言いながら食べきれない量のごはん作ってるでしょうよ」
「残すと大変な目にあうからな……」
「ええ……」
「左近」
「なんですか?」
「俺は大学に行くわけだが、通学で片道二時間かかる」
「はい」
「学校内で会うことももうないのだ」
「そうですねえ」
「……」
「続きは?」
「別に。なんでもない。左近は薄情者だ」
「寂しいですよ、左近は。三成さんは寂しくないんでs
「あ、ちょうちょがいる」びたっ
「…………」
「左近、見ろ、窓にちょうちょが」
「へええええ」
「なんだその顔は」
「別に。三成さんこそ薄情者だ」
「あ」
「なんですか」
「……抱きしめて欲しい」
「……はい?」
「うそぴょん!」
「なんなんですか」
「いや、兼続に言われたのだ。こうすれば『愛染明王がいったいどんなものかよくわかるぞ! うん!』と言っていたから。でもなんだか気持ち悪いからすぐに取り消してみた!」
「へえ」
「うん」
「三成さん、ご卒業おめでとうございます」
「……当然だ」
07/18
(普通だよ! そうだよ! このふたりは一生一進一退を続けるんだ!)