21:好き嫌い

義トリオ + 慶










もひゅもひゅ


幸「いつ見ても三成先輩のお弁当って、豪華ですよねえ」

三「そうか?俺はこんなに食えんと言っているのに『ちゃんと食べないと強くたくましくなれないよ!』って言われるでな」

慶「はっはー、三成はほそっちいからねえ」

三「…お前はどうしてそんなに筋肉質なのだ」

兼「しかし母上殿の愛あふるる手作り弁当、残すことはならんぞ」

幸慶「不義だ!」

兼「…む、うむ。そうだ」

三「兼続のトークはワンパターンだからな」

兼「ワンパターンとはなにごとだ!真実を述べているだけではないか」

幸「えー、でもなんとなく言うことは予想つきますよ?」

慶「義か不義か愛。これしかねえもんな」

兼「…お前ら、制服に口紅のあとをつけてやろうか?」

幸「え、ちょ、やめてくださいよ。本気で。母に不審がられます」

三「兼続、それは不義だからやめなさい」

兼「あいわかった」

慶「思ったんだがよ、兼続は『愛』をかかげてるだろ?」

兼「ああ、愛は『愛染明王』の愛でもあり、私の『博愛』の愛でもある」

幸「博愛主義者なんですか?」

兼「…半分くらい」

三「うっさんくせー」

兼「コラ」

慶「嫌いなものってあるのか?」

兼「・・・」

幸「時は金なり、沈黙は金」

三「あるということか。兼続、それは博愛主義とは言えぬ」

兼「言い訳はしないでおこう。言い訳は不義だ。しかしこれだけ言わせてくれ。誰にだって嫌いなもの、あるだろう」

三「それは言い訳だぞ」

兼「無いの?みんな、嫌いなものないの?」

幸「はい!カメムシ嫌いです!」

兼「なに、かわいいではないか、カメムシ」

慶「お前ってよくわかんねえな」

三(かわいい、か…?)

幸「かわいくありません、クサイです」

兼「なになに。カメムシというのは驚かせなければくさくないのだぞ」

幸「じゃあ、カメムシは私に会うたびに驚いているのですか?!」

兼「お前、カメムシを見つけるとひっとらえようとするだろう」

幸「はい。ニオイが有害なので」

兼「しかしだな、カメムシのニオイはカメムシにとってもつらいものがあると聞いたことがある。つまり、自分のニオイで死ぬのだ、あいつらは。かわいいだろう」

三「お前が本当にわからない」

兼「第一、くさいものばかりではないのだぞ」

慶「カメムシがか?」

兼「ああ。甘酸っぱいニオイがするものもいるらしい」

三「青春のニオイか」

幸「うわあ、カメムシ臭の青春かあ。いやですねえ」

慶「で、兼続はカメムシを愛してるんだな」

兼「愛…?いや…愛しているとは…うーん…、愛ってなんだろう。な、幸村」

幸「私に振らないでくださいっ」

三「愛はもう、そりゃ、決まってるだろう。左近だ」

慶「左近が?なんで」

幸「はい!島先生は愛染明王の化身!」

兼「なにっ、ならば、私は普段島先生を信仰しているのか!島先生、私に煩悩とはなにかと説いてくださらないだろうか」

三「左近を勝手に変態にするのはやめてもらおうか」

兼「愛染明王を変態扱いするとは三成!バチがあたるぞ!」

三「煩悩の?」はんっ

兼「そうだ、お前は煩悩になる!」

慶「兼続、言ってることが支離滅裂だぜ」

兼「いいや、なるったらなる」

三「具体的にどうすれば煩悩になるのだ」

幸(え?三成先輩、煩悩になりたい願望?)

兼「通俗的に、煩悩は108とされている。つまり、108人の三成だ」

三「ちなみに兼続。俺が煩悩となった場合でも、俺とお前の友情は朽ちぬよな?」

兼「無論だ。私は煩悩を肯定し、向上するのだ。むしろお前を愛する」

三「いや、それはいい」

幸(拒否しちゃった・・)

慶「んー…、結局、兼続はカメムシは好きなんだな。で、嫌いなものは?」

兼「山犬」

三「なにっ?!犬が嫌いなのか!犬はかわいいではないか!」

幸「そうです!ワンコイズギ!今日のわんこはチワワですよ!」

兼「だから、山犬だ」

慶「嫌いなのかー?おもしろいじゃねえかよ、アイツ」

兼「いいや、嫌いだ」

幸「あーもう!犬に対して不義ですよ!」

兼「ノン、山犬が私に対して不義なのだ」

慶「そうかあ?」

三「兼続…。結論を出そうか」

幸「兼続先輩は、カメムシが好きだけれども犬が嫌い」

三「・・お前ってやつは…本当に不思議な男だよ」

兼「そうか?いや、照れるな」



05/30