18:初恋

いっぱい










三「俺の初恋はおねね様だった…」

兼(誰だかわかるか?)

幸(いえ…)

三「母親だ」

兼「ほお」

三「次の恋が秀吉様だ」

幸「どちらにしろ家庭内なのですね」

三「しかし俺の二度目の恋は、あの雑賀孫市の存在ではかなく散ったのだ…」

兼「で、三度目の恋は」

幸(恋多き人になってる)

三「左近。現在進行形で」

兼「応援してる!草葉の陰から!」

幸「草葉の陰から応援しちゃダメですよ」

三「ありがとう」

幸「了承しちゃった!」

兼「さて慶次と孫市の関係性だが、なにか心当たりは?」

三「しらん。元恋敵のことなど」

幸「とっても仲良しのようですが…、私よりもサイヤとかいう人のほうが…」

兼(雑賀孫市は誰にとってもなにかしらライバルとなるようだ)

三(幸村!その調子だ!)

幸「ともかく、慶次さんとサイヤ人の関係性を突き詰める!」



兼「二人を追ってやってきたが、ここは?」

三「コンビニだな。 そしていつの間にヤツらの仲間が一人増えている」

兼「む?あ、ホントだ。あれはいったい誰なんだ」

幸「武蔵さん…!」

兼「知り合いか?」

幸「ええ、一時期、ボランティア活動をしてたことがあるんです。赤い羽根の街頭募金。そのときに知り合ったのです」

三「どうやって知り合ったんだ」

幸「大泣きしながら私に子猫を差し出してきたんです。それがきっかけです」

兼「街頭募金で?ネコを?」

幸「『今は持ち合わせがなくて募金はできない。俺の宝とも言うべき大切なネコを受け取ってくれないか』と。いや最初、こう、ああいう人なのかと思いました」クルクル

三「受け取ったのか?」

幸「はい。Y−36号機と名づけて大切に育てています」

三(受け取っちゃったんだ…)

兼(ネーミングがあんまり大切じゃない…)

三「後輩慶次、ライバル雑賀、クルクル武蔵。どういうメンツだ」

兼「しかもなんだか、むさ苦しいメンツだな」

幸「で、そのむさ苦しい男どもがコンビニになんの用で」

三「むう…ここからでは何を買ってるのかいまいちわからんな」

兼「見えないな…」

幸「あ、出てきましたよ」

兼「なにが入ってる?」

幸「見えないですよ…」

三「追いかけるか。三人はどこへ向かうのか!鬨の声をあげよ!」

幸「えい」

兼「えい」

三「おー」




兼「公園だな」

三「うむ」

幸「あ、買ったものを取り出してますよ」

兼「見えるか?」

三「俺の視力は野生人並だ。 …花火?」

幸「花火?」

三「なんだ、ライターが…むむう!!」カッ

兼「どうした三成!タバコが出たか?!」

三「あれは俺の大好きなケンシロウのライター…!」

幸「けんしろう…?」

兼「…三成はあの、『お前はもう、死んでいる』の大ファンなんだ」

三「おのれ…っ、俺を差し置いてケンシロウを使うなど…言語道断ッ」

幸「三成先輩、花火がやりたいなら素直に言えばいいじゃないですか」

兼(すごい変換のしかただ…)

三「いや、俺はただライターが…」

幸「ほら、見てください。学校付近をうろつく野良風魔も、彼らの食べ物を掠め取ろうと様子をうかがっています」

兼「ほんとだ。不義の申し子だ」



慶『なんだ風魔、お前、花火食うのか?』

風『我はなんでも食べる』

武『そうなのかっ!よし、お食べ』

孫『愛は風魔を育てるんだぜ』



幸「男だらけの花火大会が始まりましたよ」

三「むさ苦しいったらありゃしないぞ」

兼「とか言って、お前は実はムサ男趣味のくせに」

三「ムサ男だと?」

幸「島先生ですか?」

兼「三成、ケンシロウと島教諭、どちらが萌える?」

三「ぬ、究極の選択だ! 萌えは…んー、左近」

幸「どこに萌え要素が」

三「もみあげ、胸板、スネ毛、剛毛、さらさら、タレ目、頬の傷、厚めの唇、声、がに股」

兼「もういい、もういいから」

三「あ、俺の初恋、もしかすると左近かもしれぬ」

幸「え?」

三「左近、おねね様、秀吉様、ケンシロウ、左近の順かもしれぬ」

兼「だが初恋は実らぬというが」

三「初恋ではない。五番目だ」

幸「ちなみに初恋は何歳で?」

三「四歳のころに、左近を嫁にするといって聞かなかったという話を今思い出したのだ」

幸「四歳のころに…、島先生を嫁に…」

兼「個人的にその後なにがあって母親に恋をしたのか知りたいが」

三「俺もわからぬ。なんでも数年後に、『おねね様の嫁にしてほしい』と言っていたとか」

兼「子供心もわからんな」

幸「兼続先輩の初恋は?」

兼「言わずもがな、父だ」

幸(言わずもがなでどうどうと父と豪語する兼続先輩はやっぱり三成先輩の友達なんだなあ)

兼「強く、酒豪で、無口で、惚れたなあ…」

三「幸村は?」

幸「へっ?私はまだですよ」

三「姉がいると言っていたな。姉とかじゃないのか」

幸「姉は、私が幼い頃にくのいちになると言ってある日家を出て行ってしまいました」

兼「父ではないのか?」

幸「一緒にしないでくださいよ」

三「俺じゃないのか?」

幸「えっ」どっきーん

兼「三成、幸村をその毒牙にかけてはならん」

三「む。すまん」

幸「はあ…」

兼「幸村、恋はいいぞ。恋は。愛あふるる。恋をせよ、ワカゾー」

幸「はあ…」(恋人いない人に言われてもなあ…)



慶「お前ら、こんな夜に草っぱらで恋の話たあ、傾いてるねえ」

兼「うぱおっ!」驚

孫「愛は不滅さ。秀吉んとこのぼっちゃん」

三「ぼっちゃんと言うなタレ男」

武「お、幸村か。恋なんかより猫はいいぜ、猫は!」

慶「コイツいっつも猫臭いんだもんよー。風魔は野良くせえし」ははっ

風「!」

兼「むう、見つかってしまった」

幸「意外にフレンドリーに歓迎されてる…」

孫「こんな草っぱらでガサガサして、話し声なんかするから野外ハレンチかと思ったのになあ…」

慶「心底残念そうな顔で言うなって」

三「ケンシロウライター、貸してくれ」

慶「お、やんのか花火」渡

三「世話になった。俺は帰る。兼続、幸村、花火楽しんでこいよ」去

幸「あ、三成先輩…」

兼「帰ってしまったな」(私も帰りたい)

武「なんだなんだ、俺の猫の話、まだしてないっていうのに」



慶「ちょ、待てよ? ライター無いのに花火なんて…」






じえんど

05/26