12:机の落書き

左近










あーあーあーあー。コイツら、学校のモンに落書きなんかしやがってよ。お前のモンじゃねえってのに。

なんじゃこりゃ?かっわいくねーキャラクターだな。チーズなの?スポンジなの?

あ、名前書いてある。スポンジ…ボブ?

おいおい、ボブって顔じゃねえだろ。アメコミの魅力ってよくわかんねえな。…もしかしたら、コイツの画力の問題か?

ったくよー…、ペン…わ!これ油性ペン?バカじゃねーの!

くそー…、消せって言っても言うこと聞かねえし、あーあ。クレンザーとスポンジ、どこだっけ。

………お前じゃねえよ、スポンジボブ。そんな目で俺を見るな。

っと、コイツもかよ。

なんだなんだ。

『疲れがとれにくい』

知るか。

『朝からだるい』

黙れ。

若いんだからよ。そういうのは俺らみたいなおっさんになってから悩め。



…と、アレは、直江の机…だな。どう見ても。

あーあーあーあ。なんだよそりゃ。筆で書いたのか?

こんな机一面に…、でーんって…。

『義』って。『義』が不義を語ってるよアンタ。

なにで書いたんだよホントに…。

ん?

わ!これ、エンピツだ!

エンピツですごい綿密に塗りつぶしてある!愛だなあ…。義(不義)に対する愛だよこりゃ。



ん…?

なんだ、あの小さい字でやたらと何かを書き込まれてところどころハートや星が飛んでいる異様な机は。…俺は、誰に、説明しているんだ。

ともかく読んでみるか。

『左近イズフォーエバー』『左近ザトゥギャザー』『お前はもう、死んでいる!』

……ああ、三成さん…。

『ハートフル左近』『ソウルフル筋骨隆々左近』『あ、この先生、似てる』

矢印付きで、コメントの残された俺、と思われる似顔絵。似てるというか…これは、毛むくじゃらでしょう。俺のモミアゲが進化しただけの毛玉でしょう!

『似てる似てる。三成すごい。見事な毛玉だ』


と、直江の筆跡。

こういうのは、紙でやってくれ。なぜ机でやる。

そして左近、毛玉認定。


『ボンレスハム左近』『メンタイ・さコん』『サマーバケーションイズサコン』『夢の国で左近に会った…』


ハムと明太子が食べたくて早く夏休みが来ないかなあなんて望んでいた三成さんの姿が、とてもよく浮かぶ。


『そうか…、見事な毛玉と会ったのだな』『ああ、よく服についていた』



休み時間、直江が三成さんの机に近寄ってきて、無言で顔を突き合わせて筆談をしている様子を想像して、少し悲しくも思った左近でした。








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