10:見下ろした君の姿は
三 + 兼
三「んー…面倒だな」
兼「三成、不義を呟くな。学び舎の掃除は生徒として当然の義務だ」
三「とは言うがな、毎日毎日、帰る前に掃除など。こんなのはな、業者に任せればいいのだ」
兼「しかしなあ、自分たちの学び舎だ。自分たちできれいにするほうが気持ち良いだろう」
三「そういうものか」
兼「そういうものだ」
三「よし兼続、モップを持て」
兼「お、やる気になったのか」
三「お前は友達だからな。お前の言うことにも一理あるのだろう」
兼「友達でない人間の話は?」(一理というか一義と言ってほしい)
三「よほど理に適っていなければ聞かぬ」
兼「そうか」
三「ほらさっさとモップ」
兼「モップではなく、ホウキだぞ。モップはワックスがけのときに使うのさ」
三「ん。ホウキ」
兼「うむ」
三「なに。ここを掃けばいいのか?」
兼「そうだ」
三「でもよく考えれば、俺は芸術選択で音楽をとっていないから、音楽室の掃除などしても無意味だと思う」
兼「別の人が使うだろう」
三「そっか」
兼「ほら、掃いた掃いた」
三「排他的経済水域」
兼「二百海里」
三「正解」
兼「政界」
三「国民投票法案十四日成立」
兼「その問題点を述べよ」
三「不義」
兼「よし。これで次のテストの時事問題もカンペキだな」
三「うむ。義と不義ですべて片付けるなんて兼続らしい」
兼「そんなこたない」
三「ところで兼続」
兼「なんだ」
三「お前、俺だけが掃き掃除をしていることは不義ではないか」
兼「そんなこたない。ちりとりを持って待機しているではないか」
三「そうか。でも立っているだけじゃないか」
兼「三成の掃き掃除が終わるのを待っているのだ」
三「その間に掃き掃除をしようという義はお前には働かないのか」
兼「もう終わるだろう」
三「うん。ほら、構えて」
兼「ん」
三「……と、こんなもんでいいかな」
兼「いい」
三「よし、ゴミ箱」
兼「待て」
三「なんだ」
兼「ついさっき、ゴミ捨て当番の人が新しいゴミ袋に換えて、ゴミ捨てに行った」
三「うん」
兼「換えたばかりなのにゴミを捨てるなど、不義!」
三「ほう。して、どうすればいいと」
兼「簡単だ」
三「うん」
兼「こうするのだ」
ガラガラ ペイッ
三「…目の前に不義の徒がおる…」
兼「なぜだ?ゴミを自然の肥料にするのだ」
三「しかし下に人がいるかもしれないだろう。ここは三階だ」
兼「いやいや、もう外掃除の人間も教室に…」ひょいっ
三「だがなあ」
兼「……」
三「どうした」
兼「…アイコンタクトしちゃった」ばちこーん
三「……」
*
幸「・・・」
慶「どーした幸村ー、うすぎたねえぞ?」
幸(アイコンタクトしちゃった…)
05/13