常識をもつ人なら誰でも、目の混乱には二通りあり、そして二つの原因から生じることを思い出すであろう。すなわち明るいところから暗いところへ入ったために生じるか、または暗いところから明るいところへ入ったために生じるかである。これは心の目についても肉体の目についてとまったく同じく、真である。そして、このことを覚えている人ならば、洞察力の混乱し弱まっている人を見たときに、そうむやみに笑えないだろう。彼は、その人の魂がより明るい生活から暗い生活へ入り、それで暗さに慣れていないゆえに見えないのか、あるいは暗闇から白日のもとへ出たので、あまりの明るさのために目が眩んでいるのか、どちらであるかをはじめに問うであろう。そして、彼は一方を健康や境遇において幸せであるとし、他をあわれむだろう。あるいは、もし彼が闇から光りのもとへ来た魂を笑うような心の持ち主であれば、この場合を笑うほうが、上方の明るいところから穴倉の闇へもどって来た人を迎えて笑う場合に比べればまだしも理由があるだろう。――――プラトン「国家」(小尾美佐訳)




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09/16