さて、次から次へと話は展開するものだ。
なにが気に入らなかったのか、なにを思ったのか、殿がどっかに行ってしまった。
朝起きたら近くにいるはずの殿がいらっしゃらない。秀吉さんに聞いてみたら、「三成って誰じゃ?」と不思議そうな顔で問いかけられる始末。
いったい、なにがどうなっているんだ。
殿はどこへ行った?
どうして秀吉さんは、殿を知らない?
もちろん、考えても結局悪循環に陥ることは変えようのない現実だ。
だが、考えずにはいられない。考えることを放棄した先の俺が、どうなるのか想像もつかない。
秀吉さんは殿を確かに知っていたはずなのに。確かに、三人で奇妙な生活をしていたはずなのに。
だが、それが俺の妄想ではない根拠は?
〇点のテストに一〇を足して一〇〇点に見ることや、財布の中の一〇〇〇円札に〇をひとつ足して、一〇〇〇〇円に見ることと変わらない、都合のいい夢想であることではない根拠は?
寝過ごしたと思い込んで、慌てて電車から降りる勘違いではない根拠は?
ないんだ。根拠なんてどこにも。
俺がここに存在しているということすら、俺は証明する言葉を持たない。
だが、確かに、存在していたはずなんだ。殿は。
この目で見て、手で触っていたはずなんだ。
俺の腹を枕にしていたはずだし、俺を変な薬の実験台にしたりしていたはずなんだ。
どうして存在していないと言う?
俺は見たはずなのに、秀吉さんは、どうして見ていない?
秀吉さんの見ているものと、俺の見ていたものは、違う?
全てが空想なのか?
赤いバラは本当に赤いのか?
もしかして、“俺は”赤に見ているだけで、秀吉さんには白に見えていたのではないか?
潰えゆく世界に俺はひとり、正気のまま……、いや、俺が正気というものは俺ひとりが見ているだけの錯覚にすぎないのかもしれない。
多分、俺は知っている。
この世界のことを。
だが、認めたくは、ない。
(嗚呼、すべてが、創造の産物なのだ)
Q.E.D
06/29
なんじゃこのオチと怒られることを覚悟していますが、最初っからこの予定でしたすみません。
どういうオチなのかは、お好きにMOSOしてくだされば十分です