あついおとこ

四人









兼「そういえば、前から聞きたかったのだが、意外と島殿と幸村は仲がいいのか?」

幸「え? なにを突然。ばかですか? 病院ですか?」

兼「いやいや、根拠はある」

幸「興味深いですね」

兼「ほら、なんか前に、島殿が『幸村!』って、名前で呼び捨てにしていたではないか」

幸「ああ……」

兼「察するに、ある程度の親交があると」

幸「まあ、そう思われるのも無理はないでしょう。とりあえず島殿は今差し歯が数本あります」

兼「そんなことも知っているなんて……。よほど仲がいいと見た」

幸「ええ、私がへし折ったので」

兼「なるほど」(遠回しにあまり仲が良くないと言っているのだろうか)

三「そういえば世間では、遠呂智が再臨したとかどうとかでなんか言っていたらしいけど、どうだった? 
楽しかった?」

兼「わ、今さらすぎる」

幸「自分があまりに出番がなくて実感が沸かなかったのでしょう」

三「まあな。俺の代わりに左近が大活躍なんてもうなんなの。俺を差し置いて大活躍の大出世ってどういう
ことなの。俺を仲間はずれにして君たちなんなの?」

兼「まあまあ。お前は以前に大活躍したじゃないか」

三「ずっと左近と一緒だったなんてずるい」

幸「できれば代わってさしあげたかったくらいです」

三「ならもっと早く対処できたはず」

幸「いや、まあいろいろありまして」

兼「なんかあったか?」

幸「性懲りもなく『幸村!』と呼んでくるので、歯をへし折るのが忙しくて」

兼「例の差し歯か」

三「幸村はどうして左近が嫌いなのだ?」

幸「嫌いではありません」

兼「そうは見えないが」

幸「蚊が一匹飛んでいるとします」

三「うん」

幸「腕を食われました。しとめそこない、逃げられました」

兼「あるある」

幸「忘れます」

三「うん」

幸「かゆいです」

兼「だね」

幸「忘れたのに、また蚊が飛んできて、今度は足を食います」

三「うん」

幸「またしとめそこないます」

兼「あー、あるある」

幸「かゆい場所が増えました」

三「うん」

幸「それを何度も繰り返します」

兼「あるある」

幸「すごく、ムカつきますよね」

三「そうだな。はらわたが煮えくり返るな」

幸「その蚊が、島殿です」

兼「なるほど」

三「わかりやすいが、左近はそんなに幸村にはかまわないと思うが」

幸「……」

三「?」

兼「つまり幸村は、信玄公と三成にやたらとかまう島殿が鬱陶しいのだよ」

三「なるほど」

幸「こんな胸糞悪い話はやめて、もっと楽しい話をしましょう!」

三「楽しい話か」

兼「ふむ。そういえば、幸村の新しい衣装、ずいぶんと質素だな」

幸「……」

兼「ごめんまちがえた」

三「知ってる」

幸「兼続殿の新しい衣装はずいぶんと普通ですね」

兼「そうか? 私としては、色合いが若干私に似合っていないような気がしていたのだが……」

三「兜がなんか普通だったもん。物足りないよね」

兼「いや兜はさほど問題じゃないのだが」

三「まあ語ろう。左近の胸元について」

幸「ああ、一度、あの衣装に着替えて出てきたので、歯をへし折りました」

兼「二本目ゲットォ!」

三「いやあ、アレを見たときはあまりのセクシーさに俺は脱糞した」

幸「!」

兼「!」

三「……いや、驚きの程を表現したかっただけだ。引くな。実際は失禁程度だ」

幸「!」

兼「!」

三「……なんかごめん。病院行ってくる。……いや、めんどくさい。病院が来い」

幸「まあサプライズがありましたが、三成殿の新しい衣装はなんか良かったです。この真田、失禁します!


兼「!」

三「いや、そのなんだ。気を使ってくれなくていい……。俺がなにか間違えていたことは確かだ。お前は間
違えなくていい」

兼「……まあ、いろいろ言葉を失ったが、三成は袴も似合うのだな」

三「ありがとう」

左「おやみなさん、相変わらず仲良しですなあ」

幸「!」

三「あ、左近」

左「殿、探したんですよ。ちょっと確認したいことがですね」

三「わかった」

幸「島殿」

左「はい、なんですか?」

幸「その格好はどういう事態なんです?」

左「ああ、これですか。新しい衣装です。最近暑いので、これくらいのほうが過ごしやすいのですよ」

幸「以前言ったような気がします。胸毛は嫌いだと」

左「だいじょうぶです」

三「メルヘンゲット」ぶちっ

左「たった今、処理されました」

兼(むっ、胸毛を引き抜かれたというのに動じない……ッ! 慣れってこわい)

左「でも殿、直江殿も幸村もいるというのに、あまり堂々と胸毛を抜かれるのはどうかと」

幸「……おっと足がすべったぞー」グドムッ

左「あべしっ」






07/17