高揚感の後の倦怠感

義トリオ + 左









三「はあ……。最近刺激がないな」

左「えーいっ」つん

三「ああっ! 俺の、俺の腕に些細で愛らしい刺激が!」

左「えいえいっ」つんつん

三「はうあ! ほっぺに刺激が!」

左「……」

三「……」

左「どうです?」

三「だめ」

左「そうですか……」

三「そういう刺激ではなくて、こう、刺激臭のようなものがな……。左近、脇を出せ」

左「左近の脇は刺激臭認定ですか」

三「誰でもそうだと思うぞ」

左「じゃあ自分の脇のニオイでも嗅いでいればいいじゃないですか」

三「……」もぞもぞ

左「冗談です」

三「よかった。お前なら止めてくれると信じていた」

幸「こーんにーちわーんだふぉー」

三「あ、幸村だ。いらっしゃいませーっくす!」くわっ

左「とっ、殿、大声でなにを……」

幸「失礼しまーっする」

三「丁度いいところにきたな幸村。今、退屈していたのだよ」

幸「あ、なら最近私が考え出したとっても苦しいけれどなんだか楽しくて快感な痴態を見せたくなる秘術を島殿で試してみましょうか」

三「ちっ……痴態……。ちょっとこっちへ」ちょい

幸「はい」

左「や、ちょ、なにそんな興味を示しているんですか。左近の痴態を見て喜ぶ人間がどこにいるっていうんですかやめてくださいよ! 真田殿も嬉々として教えないの!」

幸「つまり……ごにょごにょ……で、ごにょごにょを、ごにょごにょして、さっきのごにょごにょをこうすれば」

三「なるほど。勉強になった」

左「殿に夢を見ることを諦めて早数ヶ月経って真田殿は純白穢れなき天使ちゃんだと思っていたのにそれすらも左近から奪いますか」

幸「やめてください。私は三成殿の天使ですが島殿の天使ではありません」

三「お前、俺の友を変な目で見たらお前のスネ毛を剃るぞ」

左「足がつるつるな左近なんて左近じゃない」

幸「足がつるつるな島殿は義をかなぐり捨てて怠惰の極みにいる兼続殿と同等かと」

左「ほぼ無価値じゃないですか」

三「あー、暇だなあ」

幸「兼続殿をお呼びしましょうか?」

左「ああ、直江殿でしたらなにかしら笑わせてくれるかもしれませんよ。それに、いい刺激になるかと」

三「兼続が俺に刺激を与える……?! ど、どこに!」

左「どういう星の下に生まれたらそこまで欲求不満になれるのですか」

兼「こーんにーちわんだっふるー」

幸「あ、噂をすれば影が差す」

三「いらっしゃいませどあーん」

左「あ、ちょ、さっきと挨拶が違う! ちょっと意識してる!」

幸「こんにちわんぷっしゅ」

兼「ひさしぶりりあんと」

三「で、兼続、なにをしにきたのだ。俺を刺激しにきたのか?」

左「直球!」

兼「ん? 刺激……? 刺激……、うーん、刺激と言ったら刺激かな」

幸「真田の戦、これに見よ!」グドムッ

三「さすがだ、幸村」

兼「待て二人とも! 私は無罪だ!」

幸「三成殿は危険物なので刺激を与えてはいけません!」

三「そうだ、俺を丁重に扱え」

左「それでいいんですか、殿」

三「ん……?……うーん……、よくない。幸村、今のはよくない」

幸「ごめんなさい」

兼「なにがなんだかさっぱりだがとりあえず遊びに来たということは伝えておく」

左「いらっしゃいませ。粗品ですが」

兼「ああ、タオルか。こういうものは意外と実用性があっていいな」

幸(この人、言外に帰れって言われていることに気付いていない! すごい鈍感!)

三「……で、兼続。なにか用事があったのか?」

兼「そうそう。ちょっと小話があったのでそれを話そうかと思って来たのだ」

三「ほう、言ってみろ」

兼「ダジャレを考えた」

左「あ、どうぞ。これも粗品ですが」

兼「ああ、すまないな。なんというかタオルも嬉しいがたまには缶詰とか……」

幸「どんなダジャレです」

兼「まあ待て。あっちこっちに話が飛んでいると私が混乱する」

三「もったいぶるな。ダジャレを言え」

左「この粗品もいりますか?」

三「お前はさっきから粗品粗品うるさい」

兼「粗品ですが、どうぞよしなに……」

幸「はい?」

兼「ううん、何も言っていない」

幸「嘘をついている自分に気付いていますか」

兼「なっ、なにも言っていない! 今のは即興で考えたからちょっと下手だった!」

三「で、とっておきのダジャレは?」

左「殿が苛立っている! 早く殿に刺激を与えてください!」

兼「私は友達には手を出さない主義なんだ」

左「どいつもこいつもどこの星の下に生まれたんだ」

幸「じゃあ友達じゃない人には手を出す主義なんですね」

兼「え……、まあ、そういうことになるな」

三「じゃあ左近には手を出すのか……。左近に近づくな!」

左「左近は友達じゃないんですね」

兼「いや島殿には手を出さない主義だ」

左「友達認定っ」

兼「いや友達ではないけれど、謙信公が生前、口をすっぱくして『武田の島左近には手を出すな』と言っていた」

幸「それはどうでもいいのでダジャレを聞きたいです。こんなに期待させて罪な人ですね」

兼「だから私は無罪だ」

三「はやくはやく」

兼「……あー、うぉっほん。えー……」サッ

左「……」

兼「こっ、この紙の出来栄えは、なんと神懸りなのだろう!」






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