過去拍手の慶次と三成

慶 + 三









慶次と三成 low


「慶次か」

「三成じゃねえか」

「三成だ」

「ああ、わかってるさ」

「……」

「……」

「……なにか喋らないのか」

「え? あー、そうだねえ。……元気か?」

「ああ」

「……」

「……」

「……お前は元気ではなさそうだな」

「いんやー、そんなことねえぜ?」

「静かな慶次……、無口な兼続と同等に希少価値のあるものだな」

「俺、静かかね?」

「ああ」

「そっかー……。そうかそうか」

「……」

「……」

「……なにかあったのか」

「いや……別に。たいしたことじゃねえさ」

「そうか」

「……」

「本当に珍しい。録音機器を持ってくればよかった」

「ほんなにめずらしいかねー?」

「ああ。そうだな……。網戸に穴が開いている確率くらい珍しいぞ」

「……どんくらいだ?」

「わかりにくかったか。すまない。別のことでたとえると……、首を動かしたら変な音が鳴る確率くらい」

「高確率じゃねえか」

「ん?」

「あー、なんでもねー」

「変な慶次」

「……変な三成」





慶次と三成 high


「おっは、三成じゃねえか! こんなとこでなにしてんだー?」

「む、けいーじ!」

「なんだよそのアクセントは! コイツゥ!」ごっつん

「あだっ……、いたいじゃまいかチミ!」

「はっはっはっはっは」走

「あっ、待て待て慶次ー!」走

「捕まえてみろやあー! はっはー!」

「ふ……、石田三成の本当の恐ろしさ、教えてやろう」

「んー?」

「楽しいなあ!」


どーん


「おああああっ、わっ、罠!」

「こんなこともあろうかと、事前に設置しておいてよかった」

「ははっ、傾いてるねえ。惚れるぜ!」

「俺に惚れると低温火傷するぞ」

「微妙なたとえだなあ」

「む……。俺に惚れると爆発するぜ!……とか」

「もうちょっと!」

「俺に惚れると眠くなるぜ!」

「あー、一気に駄目になった」

「駄目とかいうな駄目とか」

「だめなもんはだーめ」

「……」ぷくう

「まあまあ、怒りなさんなって」ぷす

「ぷひゅー……。空気が抜けたではないか」

「ははっ、三成のほっぺーはーやあらかーい!」走

「まっ、待てっ! そんなことを言いふらすな!」走





慶次と三成 food


「……」

「……」

「……」

「……三成」

「ん、な、なんだ」

「よだれ、しまったほうがいいと思うぜ?」

「あ、ああすまない。ちょっと口の締まりが悪かったようだ」

「ああ、気をつけろや」

「わかった」

「……」

「……」

「……三成」

「今度はなんだ」

「あんまり、睨まないで欲しいんだがよ……。ちょっとメシが食いづらいぜ」

「あ、ああすまない。別に見る気はなかったのだが……、そこに幽霊がいて、目が合って放せなかったのだ」

「幽霊っ?! どこだ!」

「いや、今はもういない、と思うが」

「どういうこっちゃ」

「よく言うだろう。視点が一点に定まったまま動かせない状態になっているとき、幽霊と目が合っている、と」

「ああ、そういうことか。びっくりした」

「俺のことはもういいから、メシをさっさと食え」

「すまないねえ」

「別に」

「……」

「……」

「……あのー、三成さんよ?」

「さっきからなんだ」

「……近いんだが」

「え?」

「お前、なんか近寄ってきてんだろ?」

「そ、そんなことない! 断じて! 慶次に近寄ったところで俺になんの利点があるというのだ!」

「お前、狙ってんだろ」

「慶次を?! ばかにするな!」

「いや、メシを」

「……メシか」

「あ? 俺、メシ以外のなにか持ってたか?」

「いいや。メシを狙ってる、か……。そんな時期もあったな」

「いつの話をする気なんだよー」

「今日の話のつもりだったが」

「そうか……。とりあえず、食うか?」

「誰を?」

「いや、格助詞がおかしいだろうが。誰『を』じゃなくて、誰『が』だろ。お前が、メシを」

「なぜ?」

「なぜって……、あんなによだれ飲み込んで、もの欲しそうな目で睨んどきながらそれを言うかあ?」

「だってそれは慶次のものではないか。俺が食べる理由はないぞ」

「っかー! そんな理屈で考えて、難儀な御仁だ」

「なにを言っている」

「食いかけでいーんなら食おうや。腹、減ってんだろ?」

「だから……」

「腹が減ってんのに我慢する理由なんてあるか? ねえだろ。ならヨシだろ!」

「……そうか。なら、少しもらおう」



(慶次と三成ってものすごくかあいらしいコンビだと思っています)





慶次と三成 vitamin


「……」ぶっすう

「なあにそんなぶすっくれた顔してんだあ? 三成」

「……」ぶすっ

「んー? シカトはよくないぜ」

「慶次」

「お」

「お前の肌は、なぜツヤツヤなのだ!」

「……はあ?」

「お前は栄養にも気を使っていなさそうだし特別なケアをしていそうでもない、毎日、日光にたくさん当たって槍ぶん回しているのに! なぜそんなにツルプニなのだああ!」

「そんなこと急に言われたってなあ……。俺の肌なんて普通だろ?」

「俺は好き嫌いを我慢して野菜を食べているし食べ過ぎにも注意している。暇があるときは庭の雑草を抜いたりしているし日傘は欠かさない。朝晩の洗顔も念入りにしているのに! それなのに! 荒れるのだああ!」

「そりゃあ、適度な運動が必要じゃねえの?」

「運動? 言っただろう。庭の雑草を抜いていると」

「ははっ、そんなの運動のうちに入らないぜ」

「そうだったのか……。俺にはあれが精一杯の運動だった」

「……引きこもり生活はやめろよな?」

「わかった」

「あ、あと、三成のことだからな。夜更かししてっだろ」

「……」

「夜更かしは肌の大敵だろー?」

「仕事が終わらないからな。しかたないのだ」

「なーら諦めるんだな」

「だっ……、いや、いい。うん。サプリメントでフォローする……」

「あ、ちょ、待てや。なんかあったのか?」

「……さこが」

「サコ?」

「さこが『最近肌荒れてますねえ。あ、ニキビありますよ』なんて言ったのだよ!」

「サコ?」

「左近のことだ。たまに『ん』を言い忘れる」

「あー」

「戦場で『きれいな顔してやるじゃないですか』と、さこが言わない!」

「あー……」

「俺の顔が! 顔が! 最近シワも増えた気がする……あれ、くすみ……シミが……、ニキビが……!」

「おいおい、落ち着けって。そんな年を取り始めた女みたいなこと気にしてどーすんだあ?」

「ぶああああ」

「おっ、おい、泣くなってこんなことで……、弱ったな……」

「秀吉様が、お前の顔は整っていると、女子だったら愛でる対象だったと言ってくれたのに! 醜くなったら俺は左近といちゃらぶできない!」

「あー……。だーかーらー、落ち着けって。なにも致命的な変化じゃないんだろ? 毎日規則正しく生活しとこうや。様子見しようぜ?」

「……」

「あーもう、なんで俺にそんなこと言うかねえ? 俺ァ確かに傾奇者だがよ、流石にそういうことは専門外なんでなあ。もっと、兼続とかそこらへんに言えばいいじゃねえか」

「兼続はだめだ」

「なんでや」

「兼続は美的センスが少しずれている」

「……あー、まあ、そうか。それで、消去法で俺になっちまったってわけか」

「……すまない」

「いやいや、謝んなって。……と、お迎えが来たみたいだぜ? お前さんのダーリン」

「だーりん? 左近はそんな名前ではない」

「あー、そうかいそうかい。早く行って来な」

「む。世話になった」

「はいはい、さよーなら」




(泣きつくんなら慶次か左近)




慶次と三成 father


「おとうさん、だ」

「……は?」

「いや、慶次は父上だな、と思ったのだ」

「似てんのかあ?」

「ぜんぜん」

「?」

「左近が母なら慶次は父だな、と」

「……俺が、左近の夫?」

「ああ、別に他意はない。ただそれっぽいな、と」

「俺と左近がお似合いのカップルっぽいってことか? ははっ……言ってくれるねえ」

「違うぞ? ただ父母っぽいだけだ」

「そーかそーか。ならいんだけどよ」

「兼続は……なんだろう」

「長男っぽくねえか?」

「……二つ左隣の家の長男っぽい」

「わ」

「幸村はイトコの小さい子っぽい」

「あっはは、兼続だけ無関係じゃねえか。しかも微妙に遠いしよ」

「なんとなく、そんな感じがする。俺は一人っ子っぽく見えるだろう?」

「あー、そうだな。そんな感じするわ」

「幸村は次男か末っ子だな」

「犬っころみたいだからなあ。幸っころ、村っころ……、どっちがいい?」

「どっちもダサい」

「ははっ、ハッキリ言うねえ。惚れた!」

「笑えないな」

「そうかあ? 三成はもっと笑ったほうがいいと思うぜ?」

「余計なお世話だ」

「そういや、左近がおかんみたいだって言ってたが、どこらへんがおかんなんだ?」

「今度、左近の乳を搾ったらわかるぞ」

「……出るのか?!」

「冗談だ」

「……うっわ、お前さんが言うと冗談に聞こえないなあ」

「よく言われるな。しょっちゅう冗談を言っているのだが、皆いつもだまされる」

「そりゃ、真顔で言うからなあ」

「真顔で言ったらいけないのか?」

「いや……そんなこたねえけどな。まっ、がんばれがんばれ」

「? 言われなくとも頑張ってるつもりだが」

「あー、冗談を変顔で言えるようになるようがんばれや」

「そんな頑張りは嫌だ」






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