それを愛というならば

義トリオ + 左









三「幸村、それなに」

幸「……鶴? でしょうか。いや、……ウサギ、です」

兼「だよな、ウサギだよな」

三「三百三十三羽……、確かに、ウサギはそう数えるけれども!」

幸「だってこれ! 白いし、目のあたり赤いし!」

兼「でも飛ばないよ!」

幸「ほら、この長いなにかが飛べそうです!」

三「それは耳!」

幸「わあ本当だ耳でした!」

兼「……落ち着こうか」

三「そうだな。なんだかテンションがだだ上がりしてしまったな」

幸「でもツルっぽいですよね!」

兼「落ち着けと言っている」グドムッ

幸「ぐっ……、あ! ウサギが逃げ出しましたよ!」

三「捨て置け。鶴ではないのだから」

幸「でも、あの、せっかく捕まえてきたのに……、あの、私の努力が……、その……」

兼「……まあ、いいんでない? 千羽中の三百三十三羽くらいウサギでも」

三「……そうか?」

幸「はい。島殿ならきっとだまされます」

兼「そうだ、島殿なら老眼だし」

三「そうか、それもそうだな」

幸「じゃあ、捕まえにいかなくてはなりませんね!」

三「頑張れ幸村」

幸「……でも、あの……、その、一人で一気に三百三十三羽を追いかけるのは……、その、ウサギはすばしっこくて……、その……、ええと……」

兼「追いかけるか」

三「じゃあ、俺は、集めた六百六十七羽を監視しているから」

兼「バカモノッ。お前も一緒だ!」

幸「我ら運命共同体の誓いを結んだではないですか」

三「……ふう。しかたあるまい。よし、行くぞ!」






三「さて、無事にウサギを捕獲できたわけだが、俺たちが捕まえた六百六十七羽の鶴が逃げてしまった」

兼「大変だったな。あれから鶴を探しに行ってそうしたらウサギが逃げていた」

幸「最終的に鶴を探しながらウサギを探しましたね」

三「学習能力がないな、俺たち」

兼「ま、いいんでない?」

左「その結果が、この千羽の鶴とウサギですか」

幸「あ、怪我の調子はどうですか?」

左「三日前に完治しましたが」

三「は?」

左「三日前に完治いたしました」

兼「……不義だ!」

左「左近が?!」

兼「私たちが千羽鶴ウサギを届ける前に怪我を治してしまうなんて私たちの義に背く行為だ!」

左「冗談じゃねえよお前左近にいつまでも怪我してろって言うのかよ」

三「左近ならできないこともない」

左「できませんが! いくらあなたたちの千羽鶴をもらうためにわざと怪我するほどお人よしでもないんですが」

幸「お人よしの代名詞は捨てたのですか?」

左「今しがた捨てますよ」

兼「幸村、これが大人になるということだ」

幸「私たち、義を愛する者にとって世知辛い世の中です」

左「それが義の世だったら左近にとって世知辛い世の中ですが」

三「で、受け取るの? ないの?」

左「ないと言ったら」

兼「ふーぎ! ふーぎ!」

幸「ふーぎ! ふーぎ!」

三「不義コール」

左「じゃあ、受け取りませ」

三「それと、お前の夢を壊す」

左「ははっ、この年になれば、夢なんてそんな……」

三「俺はお前の目の前で全裸で走り回って、鼻に指をつっこんで、おくびを出して、ごろごろ寝転がって、放屁する。そしてよだれを垂らしてハアハアしながら女子を追い掛け回してお前の部屋の障子すべてに穴を開ける。お前にむかって尻も叩くし舌も出す。それからありとあらゆる性癖を城下に向かって吐露する」

左「謹んで受け取ります」

兼「義の力だな」

幸「なんでも義で片付く便利な世の中ですね!」

兼「そうだな! 世の中すべてが義になればいいと思うぞ」

三「これは義ではない」

兼「なにっ」

三「愛だ!」

兼「そうか、これが、愛、か……」

幸「三成殿は愛の化身ということですか……。ますます尊敬します」

三「ふふん。幸村、もっと敬ってもいいのだぞ」

幸「はい! これからは下僕として扱ってくださってもかまいません!」

兼「いや、幸村……、それは間違っているのでは……」



左(鶴とウサギどうしよう。焼き鳥にしようかな)






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