似たもの同士
五人
三「不義って……フグに似ているな」
左「え、あ……、本当ですね」
兼「不義いいい！」
三「フグが食いたいのか？ おや不思議、ここにフグが」
兼「フグを調理するには調理師免許を取らなくてはならない！ 三成、お前が持っているようには見えない！ 適当にさばいた危ないフグを私に与えるとはなんたる不義！」
左「フグにお詳しいんですね。さすが直江殿。義とフグの申し子」
兼「フグの申し子……ッ。島殿には私が下膨れに見えると……！」
三「……フグ、ごめんね」
兼「フグに謝るとはフグ！……不義！」
左「自分を見失い始めている」
兼「みんながフグフグ言うから間違えただけだ」
三「しかし兼続、お前、人のこと言えるのか？」
兼「なにがだ？」
三「ほら、よく言っているではないか。『フグを断つ！』と。つまり、フグをさばいているのだろう？」
兼「え……、ちょ、なに？」
三「だから、フグを断つと言っているではないか」
兼「フグじゃない！ 不義！」
三「『それだけの力があるというのに、フグに味方するとは』……。フグ蔑視はよくない。フグだって生きているのだから」
兼「こら三成！」
三「『天に変わりてフグを討つ』……フグはお前が考えているほど嫌われ者じゃない」
兼「話を聞いてくれ……」
三「『フグの悪口など、逆に褒め言葉』だと？ フグと会話ができるのか。……そうか、海産物つながりか」
兼「……三成なんか、パンドラの箱に入れてやる！」
三（パンチラの箱？）
左「ちょ、人んとこの殿を勝手に封印しないでください」
兼「いやだ！」
左「嫌だじゃねえだろう！ 少し黙れ！」
兼「……はい。ごめんなさい」
三「ごめんなさい」
左「別にいいんですよ、わかってくだされば」
三「なんかもう生きていてごめんなさい。でも生きるよ俺は。死ぬもんか」
左「そんなこと要求していません」
兼「私は別に悪いことなんてないけれどごめんなさい。でも私は被害者だ」
左「じゃあ、誰が一番悪いんですか」
兼「……」
三「……」
左「黙ってちゃわかんないでしょう」
兼「さっき黙れって言われたから……」
左「黙れって言われてからも普通に喋っていたじゃないか」
三「兼続がフグをあまりにバカにするから兼続が悪い」
兼「私はフグなんて言っていないのに三成が突然フグと言い出したから三成が悪い」
左「で、結局？」
三「……誰が悪いと思う？」
兼「不義が悪いと思う」
三「そうだな。不義が悪いな」
兼「不義が悪いと思います」
左「で？」
三「……左近はまだなにかを求めているっぽいぞ。なにを求めていると思う？」
幸「義、ではないでしょうか」ひょこっ
三「義？」
兼「一人が皆のために、皆が一人のために尽くせば天下泰平となる」
三「信じられんな」
兼「ふ……、試してみるか？ 直江兼続」
幸「真田幸村」
三「……石田三成」
兼「……」
幸「……」
三「……」
左「ちょ……、え、左近を見ないでくださいよ。いったいどういった賞賛の言葉を待っているのですか。いやですよ、そんなイノセントな目で左近を見ないでください。頭がおかしくなりそうだ！」
兼「一人が皆のために」
幸「皆が一人のために」
三「天下泰平……。おかしいぞ、なんか、違うぞ」
兼「おかしいな」
幸「真田の軍略もここまで、か……」
慶「前田慶次！」ひょこっ
兼「おお！」
幸「慶次殿！」
慶「こういうことだろ？ ほら、左近もこっち来いや」
左「え……、あの……、はあ……。島左近」
三「……知遇を得て、嬉しく思う」
左「……はあ」
兼「やったね三成！ お友達ができてよかったね！」
幸「三成殿すごい！ 我ら義の誓い、五人になった！」
慶「わーい！」
左（ああ……、なんか、俺もアホになれるような気がしてきた）
兼「よし、三成の胴上げだ」
三「よせやい、照れるだろう」
幸「わーっしょい！」
慶「おらっ、わっしょい！ わっしょい！」
三「……ったく、騒がしいやつらめ……」
兼「わっしょい！ ほら島殿も」
左「あ……、はい。わっしょい、わっしょい」
幸「おめでとう！ 三成殿おめでとう！」
慶「わっしょい、わっしょい！」
左「わっしょーい、わっしょーい」（あれ、俺なんで殿の胴上げしているんだろう）
三「あ！ 誰だ、今俺のシリを揉んだヤツ！」
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