ごめんね

義トリオ









兼「あ、三成だ。よおし、いっつも『イカ、用意はいイカ!』と寒いギャグを言われてきたストレスを思う存分発散するぞ! よい子の皆、用意はいイカな?……死にたい。すごく死にたい。なぜだかわからないけれど私は今、地雷を踏んでしまったような気がしてならない。もう私は頑張れないような気がする」

幸「兼続殿、どうしたのですか? ひとりでブツブツと」

兼「ああ、幸村か。私は独り言を言っていたのか?」

幸「え、今、誰と会話していたんですか? 誰が見えているんですか?」

兼「いや、私はしゃべっていただろうか、と」

幸「自覚がないんでしたら大問題ですね」

兼「そうか、幸村、大問題だ。この問題を解決するにはどうしたらいいのだろう」

幸「とりあえず、黙ればいいと思います」

兼「わかった」

幸「はい」

兼「……」

幸「……」

兼「……」

幸「あ、三成殿! こんにちはー!」ダッ

兼「……」

三「幸村、今日も元気だな」

幸「はい、元気いっぱいです。そういう三成殿も今日は元気ですね」

三「ああ。とうとう左近の眉毛を手に入れた」

幸「え、眉毛ですか」

三「そうだ。左近の毛の中で唯一取り損ねていたものだったのだがな。これで枕を高くして眠れるというものだ」

幸「そうですか。ほどほどに」

三「ああ。……あれ、兼続ではないか。静かだったから気付かなかった。元気ないのか?」

兼(黙れと言われたから黙っているのだよ)クネッ

三「……? いや、ジェスチャーじゃなくて」

兼(なぜ以心伝心できぬのだ! 黙れと言われたから、黙っている!)クネッ

三「……どうしよう幸村。兼続と会話ができない」

幸「できなくても困ることはないのでは?」

三「んー……。それもそうか」

兼(! 幸村!)

三「冗談だ兼続。で、いい加減なにか喋ったらどうだ。喋らないお前は気味が悪い」

兼(そう言われてもなあ)うーん

三「いや、悩むのではなくてなにか喋ったらどうだ」

兼「すっぽん」(うーん、なにを喋ればいいんだかなあ)

三「……えっ?」

幸「多分、『三成を月にたとえたら私はスッポンだから会話するのもおこがましい』という意味だと思います」

兼(幸村!)

三「そうなのか? なぜいきなり卑屈になっているのだ。俺を月にたとえたらお前は、まあ、イカだろう。そこまでへりくだらなくてもいいと思う」

兼(三成! やっぱり私はイカ扱い!)

幸「さっき、兼続殿がひとりでブツブツお喋りになっていたのですが、本人に自覚がなかったようなので『黙ってみたらどうですか?』と言ったのですよ」

三「へえ」

幸「そうしたらスッポンとしか言わないので困ったものです」

三「それは困ったな」

兼「大丈夫だ、スッポン以外のことも喋る」

三「わっ、喋った」

幸「喋った」

兼「そ……、そんなに驚かれるとむしろ傷ついてしまうのだが」

三「わっ、もっと喋った」

幸「いっぱい喋った」

兼「私は喋らないほうがいいのか?」

三「喋り続けている」

幸「一人で喋り続けている」

兼「いやいやいや、一人じゃないだろう一人じゃ。明らかに私たち三人で、会話しているではないか。どうして私を隔離するのだ」

三「確かに一人で喋っているな、幸村」

幸「でしょう。兼続殿、一人で喋っているという自覚は?」

兼「えっ……、だから、私たちは会話をしているはずだと……」

三「自覚なしだ」

兼「否定できないほど会話は成り立っているではないか!」

幸「自覚がないのでしたら大問題ですよ、兼続殿」

兼「……そうか、大問題なのか。どうしたらいいと思う?」

幸「黙ってみたらいいかと思います」

兼「わかった」

幸「はい」

兼「……」

幸「……」

三「……幸村」

幸「はい」

三「……兼続ってあれだな。詐欺に引っかかるタイプだな」

幸「そうですね。こうも気持ちよく引っかかってくれるとなんだか嬉しいです」

兼「ほらやっぱり会話は成り立っていたのではないか!」

三「俺たちはお前をだましたつもりはない。お前が勝手にだまされたのだよ」

兼「それは噂に聞く不義というものだと思う。不義とは義ではないもので憎むべきものだと思う。この世からなくなって喜ばれるものが不義だと思う」

幸「つまり、兼続殿は私たちがこの世からいなくなればいいと思っているのですか! ああそうか! 真田の戦を冥土の土産に持ってゆくがいい!」くわっ

兼「えっ……」どきんっ

幸「今すぐ国へ帰り、城を普請されるが肝要でしょう。私も国へ帰り、兵を集めましょう。一ヵ月後が勝負だ! それまでに身辺整理をしておくがいい!」くわっ

兼「あ……、あの、なんかもう、……幸村ごめんなさい」

幸「いいえ」

三「……俺、今、幸村の顔が金剛力士像に見えた」

兼「……いや、そんな生半可なものじゃない。なんというか、地獄の番人とかしていそうな顔をしていた。なんかもう理不尽な悲しみでなにを言ったらいいかわからない」

幸「すみません。頭に血が上るとどうも、なにかが憑依してしまうそうで」

三「今もなにかが憑依していたのか」

幸「多分」

兼「なんかもう、頭に血を上らせてしまってごめんなさい」

幸「いいえ」

三「それにしても暗くなってきたな。そろそろ帰るか」

兼「そうだな……。寒くなってきた」

幸「帰りますか」

三「ああ。皆、用意はいイカな! 屋敷に到着するまで追いかけっこだぞ!」

幸「よーい、ドン!」


兼「え……ちょ、うわ……、もう! 微妙なボケをかますなあほ!」ダッ






11/03
久しぶりのskitなのにどういうわけかgdgdです。