長宗我部チカチカ

チカナリコン









三「んー……」

左「そんなに難しい顔して、なにかありました?」

三「左近か。いやなに、最近物忘れが激しくてな」

左「お若いのにこれまた」

三「困ったものだ。誰が誰だかよくわからなくなるのだよ」

左「若年性なんたらだったら怖いですねえ」

三「まあちょうどいい。長宗我部のことがあまり思い出せないんだ。俺が今から言う特徴に間違いがあったら指摘してくれ」

左「いいですよ」

三「背が高くて、細くて、青い」

左「あながち」

三「それでもって……、三味線」

左「ええ」

三「口癖は……なんだったかな……。ええと……、チカ!ってよく言わなかったっけ?」

左「言わないと思いますけれどねえ」

三「いや、こう『元親はおにぎりの具はこんぶ派チカ!』って」

左「殴られるために生まれてきたような人じゃないですか」

三「でもこの間、左近について夜通し語り合ったのだが『サコチカ!』ってずっと言っていたのだ」

左「う、うわあ」

三「だから語尾にチカがついていたはずだ」

左「うへあ……」

三「他になにか口癖とかあったような気もするが……」

左「あー、あれ、『せ』で始まる四文字ですよ」

三「セクロス?」

左「あちゃー、そうきたか」

三「違うのか……、洗面、洗濯、センベツ、戦隊」

左「じゃあ、『せ』の次は『い』です」

三「性交?」

左「あっちゃー、とんだハレンチな子供になっちまった」

三「べっ、別に普段からそんなことばかり考えているわけではないのだよ。絶対にそうだぞ」

左「ま、信じてあげますよ」

三「恩着せがましい」

左「すみません」

三「で、『せい』で四文字だろ。精通?」

左「それらが口癖っていうのもなかなかハレンチだと思うのですよ」

三「あ、そうか。口癖か。口癖なら、セイモウとかそれっぽいよな。セイ! モー! セイモー! 馬に乗るときとかよくやりそうだ」

左「製網って網じゃないですか」

三「ほら、あいつ、馬上攻撃のリーチが短すぎると文句を言われるチカ! って言ってたから、網でも使うつもりなんだ。……左近、なぜだろう。デジャビューだ」

左「別の会社のお話はやめましょうね」

三「他にもなにか口癖あったよな?」

左「ええと……、あ、あれあれ。『じょ』ではじまりますよ」

三「じょうろ?」

左「おおっと、どこの時代にも合致しないものがでてきましたねー」

三「そうか?」

左「こちとらじょうろのない時代かつ現代だってホースで水を出すってのにじょうろって」

三「でも口癖がじょうろっておもしろいと思うのだよ。『俺のじょうろに勝るものなし』とか『じょうろがじょうろである限り俺はじょうろだ』とか」

左「本当にじょうろとお思いで?」

三「……除菌とか。敵とあったら『貴様、除菌してくれようぞ!』」

左「バイキン扱いですか」

三「あ、ジョイントとかどうだろう。こう、褥で合体時に『ジョイ〜ント』とか言うのだよ。なかなかおもしろい男だな。長宗我部」

左「それらは全て殿の妄想であることを知っておいてください。彼の名誉のために」

三「だって、『じょ』で始まる言葉なんて……『浄化』? つまり敵と会ったら『貴様を浄化してくれる!』って感じか」

左「……おや、あそこに見えるのは」


元「……上等ッ!」ダッ


三「あ、上等か。なるほど」

元「俺の意思する心のまま、貴様を凄絶に叩きのめしてくれるッ」

三「頤使するだと! 貴様、俺をアゴで使う気か!」

元「意味のわからんことをッ」グドムッ

三「キシャー!」バッシム

左「殿、威嚇はほどほどにしてください」

三「左近、だってこいつ、語尾に『チカ』とついていない! ニセモノだ!」

元「俺が語尾に『チカ』とつけるのならば、お前は『ナリ』とつけるということになるぞ」

三「……そんなこと簡単ナリ」

元「顔が嫌がっているチカ」

三「この法則でいくと、左近は語尾に……『コン』ナリ! 左近、やってみてほしいナリ」

左「意外とノリノリなんですね殿コン」

元「不自然チカ」

左「いきなりやれって言われて出来るものじゃないんだコン!」

三「かわいいナリ」

左「左近は家に帰りたいコン」

元「お前の友人も巻き添えにするチカ」

三「そうするナリ。兼続は『ツグ』になるのだがどうナリ?」

元「直江の『オエ』でいいチカ」

左(……『義のためにオエ!』『愛のためにオエ!』)

三「幸村はやっぱり『ムラ』ナリ」

元「二乗するといいチカ」

左(『真田の戦、とくとご覧あれムラムラ!』)

三「慶次は……、『イジ』ナリ? 微妙ナリ」

元「これも二乗すれば解決チカ」

左(『傾くぜーイジイジ!』)

三「その理論でいくと、元親も二乗するといいナリ」

元「そんなことないと思うがチカチカ」

左「お似合コン」

三「お見合い婚ナリ?! 左近、お前、元親とお見合い結婚したいナリ?!」

元「上等チカチカ」

三「貴様……、俺の家臣に手をだすことは許さないナリ」

元「自由恋愛の時代チカチカ」

三「シャッキャア! そこに直るナリ! 左近のなんたるかをも知らぬぽっと出のひよっこに負けてたまるかナリ」

元「……嫉妬深い、束縛の強い男って、醜いチカチカ」

三「……ナリ」

左(無言にまで語尾がついている!)

元「ふ、言葉も出ないチカチカ」

三「多弁能無しナリ。恋は多弁であるが、愛とは寡黙なものナリ」

元「お前……、俺を愛してるチカチカ?」

三「ちっ、違うナリ! 俺は左近の子供だって孕めるほど愛しているナリ!」

元「孕めるわけがないチカチカ」

三「できるナリ。まず俺の腹に腹腔鏡を挿入してだな、大網の裏側にレーザーメスで傷をつけて合成ホルモンを撒布して受精卵を着床させるナリ」

元「おっ……、お前、普段からそんなことを……チカチカ」

三「つまり俺は子を生む大事な体ナリ。大事にするナリ」

元「お前の妄想力には感服したチカチカ」

三「ありがとうナリ」



左(しっかし、こうして見ると、二人とも息が合うなあ……コン)






10/07