collection

三 + 左 + 兼









三「兼続、これ、やる」

兼「ん? なんだね、これは?」

三「いいから開けてみろ」

兼「わかった。しかし三成からのプレゼントかー、珍しいなー、明日は何が降ってくるかな?」

三「雨が降るらしいぞ」

兼「そうか……、私のボケが殺されたことにがっかりしてしまったよ」

三「開けるのか? 開けないのか?」

兼「ああ、開ける開ける」ぺりぺり

三「……しゃらくさい!」バリバリ

兼「ああっ! 包装紙が!」

三「こんなもの捨てるだけなのだ、そんなにキレイに取らなくてもいいだろう」

兼「頂いたものはどんな些細な部分までも丁重に取り扱うものだ」

三「でも捨てるだろう」

兼「なにかに使えるかもしれないだろう」

三「知らん」

兼「知らんて」

三「はやく」

兼「ああ、わかったわかった。なにがでるかなっなにがでるかなっ、タラララッタ、タラララン。デターッ、でましたっ、フンドシ! 毛! 羽織! 手ぬぐい! 縮れ毛!…………?」

三「あと一つ忘れているぞ。使用済みちり紙」

兼「私に仮装でもしてもらおうと思ったのかな。いや、ぜひそうであってほしい。お願いだからそうだと言ってくれ。頼む。今生の願いだ。三成、私とお前は仲良しだろう。だから私の心中を察してくれ」

三「違う」

兼「うあああ!……あああ……! いやだあああああ! よしてくれえええ、ひっ……ひいいいい!」

三「黙れ」ポカスッ

兼「ほやっ」

三「これを、お前にやる」

兼「ははっ、アンハッピープレゼント? バッドギフト?」

三「開封後の苦情を受け付けません」

兼「クーリングオフ! クーリングオフ!」

三「受け取って三十秒経ってからの品物はクーリングオフは受け付けられません。そもそも通販ではない」

兼「これはなんだね。私にこれをどうしろという」

三「見ての通りだ」

兼「見てわかったら聞かないだろう。これが何かはわかるが、私にどう使用してほしいのかがわからない」

三「それはお前のフリーダムだ」

兼「なんて不自由な自由!」

三「さっきからギーギーうるさいやつだ」

兼「……まあ、最終確認をさせてもらおう。これは、誰のものかね?」

三「俺の物だったぞ」

兼「……えっ、三成が使用したもの?」どきっ

三「いやそうではない」

兼「ちょおおお、なにそれえええ。答えなんて聞かなくてもわかりきってるじゃないかああああ。どうして私に託すのさあああ」

三「左近が……、『またこんなものコレクションして! 捨てなさい! いえむしろ捨ててくださいお願いですから』……って」

兼「私はお前にとってゴミ箱なのか?」

三「いや……、せっかくここまでコレクションしたのに捨てるのはもったいないから、屋敷も近いことだから兼続に預かっていてもらおうと」

兼「嫌だこんなものを屋敷に置いておいたら虫が湧きそうだ」

三「タンスにコンコンもつけるから」

兼「それでも嫌だ。私がどこぞのおっさんのふんどしや抜け毛、羽織、使用済み手ぬぐいやちり紙をコレクションしている大変な変態に思われてしまうだろう」

三「今とどう違うのだ?」

兼「お前の目には私が同類に映っているのか?」

三「……どうしてもだめなのか」

兼「どうしてもだめだ」

三「でも、これ、捨てたくない」

兼「ならば島殿にそう頼みなさい」

三「頼んだ。俺だって必死に頼んだ。床に頭はこすりつけなかったが文机に頭をこすりつけて頼んだ」

兼「で?」

三「泣かれた」

兼「……心中お察ししよう」

三「わかってくれるのか? なら……」

兼「島殿のだ」

三「みんな左近の味方をする……。誰も俺の愛の深さを知ってはくれない」

兼「深すぎて怖い。……特にこの縮れ毛……、どこの毛だ」

三「……どこだっけ?」

兼「脇か陰毛かしか選択肢はないだろう」

三「まあ左近のものならどっちでもいい」

兼(目の前にストーカー……)

三「あ、見てみろ。これは左近のもみあげの毛。これは左近の無精ひげ。これは……」

兼(ひげって抜いたらすごく痛いんだろうな……)

三「で、これは今朝左近からもぎとったふんどし。もぎたてだぞ!」

兼「そんなフルーツみたいに言われても」



ドタドタドタ



左「殿おおおおお!」

三「さっこーんっ」

兼「ああっ、修羅場の予感!」

左「捨てなさいと言ったのになぜ左近の恥をそこらへんに散らかしているのですか! 誰にも知られずに捨ててくださいってあれほど言ったのに!」

三「大丈夫。兼続はよく喋るが口は堅い男だ」

兼「むしろ、この状況をどう言葉にしたらいいかわからない、というところだが」

左「ああもうすみませんすみません、うちの殿が汚物なんて届けてしまって本当にすみません」

兼「い、いや、大丈夫……。少しドギモを抜かれたが」

左「ほら殿も謝って」

三「ぶえっくしゅぶる!」

左「なにクシャミしてるんですか!」

三「生理的反応にまで文句をつけるな!」

左「いい加減『ありがとう』と『ごめんなさい』をマスターしてくださいよ!」

三「知らん」

左「ああもうこの子は! 本当すみませんすみません、なんとお詫びしたらいいのやら……、すみませんすみません」

兼「そんな謝らなくとも……」

三「ごめーんなさーいぽんぽこりん」

左「とのおおおおお!」

三「言ってみただけだ」

兼(なぜだろう……、怒られているというのに三成がとっても輝いている)

左「さあこれを捨てますよ!」

三「だっ、だめだ!」がしっ

左「なにしがみついているんですか! 離してください!」ぐぐ

三「お前と話すことなどもう何もない!」ぐぐぐ

左「キイイイ!」ぐぐっ

兼「あ、あんまりひっぱると……」



バリーン



左「……」

三「……」

兼「あーあ、言わんこっちゃない」

左「左近の恥が!」

三「俺のコレクションが!」

兼「説明すると、島殿と三成の互いに引っ張り合う力に箱が耐えられなくなったのだな。そして真ん中からキレイに箱が破け、その反動でそこの窓から中身を全てばらまいたということだ。……私の庭が!」

左「ななななんてことに……」

三「もぎたてふんどし……」

左「まだそんなこと言って! ほら直江殿に謝って!」

三「ごめんなさい」

兼「はは……、三成が謝るなんて……明日はなにが降るんだろうね……」




幸「……ん? ふんどしが……? 毛?……変なものが降ってくる日ですね」

慶「そーおだなー」







09/08
(縁側でお茶を飲んでいたらふんどしが降ってくるというシーンが浮かんできたのですよ)