インスピレーション

左 + 三









三「さーんまーがたーべたーいなー」



秀「……と、三成がめずらしく鼻歌を歌っていたんじゃが、ねね。サンマはあるか?」

ね「サンマねえ。今は時期じゃないからねえ」

秀「むう、困ったのう」

ね「なら、サンマっぽいなにかにしようかね? けずる前のかつおぶしならどっかにあったはずだよ」

秀「三成……おこるんとちゃうか?」

ね「だいじょうぶだよ、お前さま。あたしは三成を分別のある子に育てたつもりなんだから。かつおだろうがサンマだろうが喜んで食べるよ」

秀「そうか。そういうもんか。さっすがねねじゃなあ。わしの自慢の妻じゃ!」

ね「まっ、お前さまったら!」



三「さーんまーさーんまー、たーっぷり、さーんまー」

左「殿、サンマを歌い続けてもサンマは出てきません」

三「左近、ここにポケットがあることにしよう。ここだ、ここ」ぱんぱん

左「はい」

三「ぽーけっとを叩くとサンマがしゅっつっげん、もひとつたったっくっと、サンマが……ない」

左「あるわけないじゃないですか。なに無から有を生み出そうとしているんですか」

三「いいか左近。俺が求めているのは多彩なツッコミではない。サンマだ」

左「サンマっていっても、いきなり左近に海の男になれとでも言っているんですか」

三「海……、あ、ギン千代ならどうだ。あそこらへんは海に囲まれているだろう」

左「あそこらへんってサンマ獲れるんですか?」

三「頑張れば……人の和さえあれば……」

左「殿には無いじゃないですか。現在進行形で敵を増やしてるじゃないですか」

三「む。なら島津に頼む」

左「島津と仲良かったっけ?」

三「ふ。実はな。昔いろいろ取り合ったのだよ。義弘のようなダンディズムならきっとサンマのひとつやふたつ」

左「そもそも、サンマのひとつやふたつのために島津さんをご足労させることは不義というものじゃないのですか」

三「あ、そっか。腐っちゃうもんね」

左「……別に! そういうことにしてもいいんですけど!」

三「じゃあ、琵琶湖か。よし左近、竿を持て。琵琶湖にサンマを釣りに行くぞ」

左「正気ですか! 琵琶湖にサンマがいるとでも思っているのですか! アンタはバカ殿ですか!」

三「じゃあ左近。お前はリアクションとして転げまわるべきだな。そのときにカンチョーしてやる。よかったな。便秘解消だ」

左「殿の心に棲む左近は便秘に悩んでいるんですね……」

三「うむ。よく俺に『今日も出なかった……』と悲しげに訴えてくるぞ」

左「別にいいんですけどね。でも最低限、妄想と現実の区別をつけていただきたい。左近は便秘じゃありません」

三「便秘とは、便を秘めると書く。つまり、腹に便を秘めているから便秘なのだ!」

左「へえええ。殿の心に棲む左近は便を後生大事に腹のなかに溜め込んでいるんですね」

三「左近。俺はあまり汚い話が好きではない。自重せよ」

左「……」

三「よし左近、琵琶湖へゆくぞっ、琵琶湖にどちらが先に着くか競争だ。よーいどんっ!」ダッ

左「……」ダッ

三「……」ダッ

左「……」ダッ

三(無言こわっ! 無言こわっ!)

左(なんか喋ればいいのに……)

三「……さ、さこーん。追いついてごらんなさーい」(待て待て待てーこいつう、という反応を期待しているぞ)

左「……」ダッ

三(かっ、加速した! 俺にも計算外のことがあるのか?!)

左(殿が期待しているようなこっぱずかしい真似、出来るものか)

三「……」

左「……」


スタタタタタッ


兼「あ、三成。この間言っていた愛と義の関連性の論文だが……」


スタタタタタッ


兼(スルーされた……。なんか真剣に追いかけっこしていた……。私の愛と義の論文が……。私の愛と義がかけっこに負けた……)



三「サンマサンマサンマサンマ。琵琶湖でサンマ琵琶湖でサンマ」

左「ところで殿」

三「なんだ」

左「ここは佐和山城ではないので琵琶湖へは徒歩だと数日かかります」

三「なんと! 俺にも計算外のことがあるのか……」

左「殿が琵琶湖でサンマを釣る気でいることが左近にとっての計算外です」

三「じゃあ左近、俺のためにひとりお忍びで琵琶湖まで……」

左「ガマンしてください」

三「しかしだな、どうしてもサンマが食べたいときにサンマを食べねばサンマの呪いにかかりエイコサペンタエン酸が極度に増え、血液がサラサラになり、ドコサヘキサエン酸もまた活発に増え、頭の回転が良くなる……、ということの逆の現象が起こるらしい。さらには突然海で泳ぎたくなり夏季はオホーツク海で自由気ままに泳ぎ、秋季には産卵のため寒流にのっt

左「誰に教えてもらったんですか?」

三「慶次」

左「あそこらへんの人の言うことは信じないで下さい」

三「だがサンマを食べたいことは変えようのない事実だ」

左「左近の大筒でも食べててください」形似てませんか?

三「そんなまずそうなモン食えるか」ぺっ

左「殿」

三「なんだ」

左「冗談です」

三「む、すまぬ」




ね「大変だよお前さま、かつおぶしがきれてる! ちょっと琵琶湖まで行って来るわね!」

秀「ね、ねねー!」(琵琶湖にはおらんじゃろ!)




左(この親にしてこの子あり、か)







07/24
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