あしはくせーん

左 + 三 + 慶









げしっげしっ


慶「あんれー、三成じゃねえか。なーにしてんだ?」

三「足がかゆいから足を踏んでる」げしっ

慶「水虫か?」

三「? 俺ではないぞ?」げしっ

慶「へ?」

三「……む、あ、すまぬ。聞き間違えた。実を言うと俺は耳が悪い」げしげしっ

慶「そうなんかい。えーと、み、ず、む、しかい?」

三「そんな訳あるまい! この美青年の俺が水虫などあるわけがない! 移すぞ!」げしげし

慶「移す時点で水虫確定じゃねえかよ!」

三「言葉のあやだ。お前を水虫にしてやろうか」

慶「や、遠慮するわ。かゆいんだろ?」

三「うむ。かゆい」げしっ

慶「とりあえず、踏むんじゃなくてブーツ脱ごうや」

三「俺の足が見たいのか?」

慶「前々から思っていたんだが、お前は自意識過剰だねえ。傾いてるな!」

三「意外とくさかったらショックだから俺は脱がぬ。脱ぎたければひとりで脱げ」

慶「そういう敵の作り方、好きだぜー。惚れた!」

三「ぬっ……、ほ、惚れた?」げしっ

慶「ああそうとも。おもしろい御仁だねえ」

三「ほ……惚れられると困る。俺には将来を誓い合った」


左「水虫ー!」


三「がいるからな」

慶「ほら、水虫じゃねえか」

三「誰だ今三成と叫んだのは!」

慶(あ、また聞き間違えている)

三「これでは俺が極度のナルシストではないかっ!」ぷんぷんびーむ

慶「よーお左近」

左「あ、どうもこんにちは。殿、水虫の件ですが」

慶「み、ず、む、し」

三「水虫か。なんだ左近。俺は水虫ではないぞ」足白癬(あしはくせん)と言わないと紛らわしいだろう。

左「嘘つけこの万年寝太郎め」まぎらわしいのはあなただけです。

三「さっ……左近がグレた! 慶次、どうする?!」

慶「ほっといてやんな。アイツにもそういう時期が来たってことよ。優しく見守っているのが親の役目だ」

左「やめてください勝手に俺に義理の両親を作ることを」

三「とうとう『俺はこの家の本当の子じゃないんだ!』症候群が始まったぞ。どうする母さん」

慶「お前は俺が間違いなく腹を痛めて産んだ子だ。傾奇者の名にかけて誓うぜ!」

左「それは間違いなく間違いです」

三「慶次……アイツは俺の子種なのに……。それなのになぜグレてしまったのだ!」

慶「ほら父さんが泣いちまったぞ。鼻水も出してるぞ」

左「子種って……」まさかの殿慶かよ。

三「父さんはな、ヒゲが生えないことがコンプレックスなのだよ」

左「どうでもいいですけど水虫の話していいですか?」

三「ダメだ。足がかゆくなる」げしっ

慶「だーかーら、脱げってば」

左「水虫移るから離れた方がいいですよ。俺も移されたし」

三「足白癬ではない! この通った鼻筋、聡明さが滲む切れ長の瞳にかけて誓うぞ!」

左「え? そんなひとどこにいますか?」左近には見えません。

三「目の前にいるではないか!」

左「……あ、慶次さんですか。確かにそれっぽいですなア」

三「貴様……、寝ているときお前のフンドシを顔にかけてやる」

慶「死人じゃねえかよ」

左「それ以前にもっと別の箇所を気にしてもらいたいのですが」

三「まあ俺がいかに美しいかを語ったところで分かってもらえたと思うが、俺は断じて足白癬などではない。侮辱罪で怒るぞ」

左「怒るんですか」

慶「水虫かあー。兼続にチクってやろっと」

三「まてーい!」

左「待ってください!」

三「俺は、兼続にとって永遠のフェアリーでありたいのだ。だから、そういう、兼続の夢を壊すことは許さない」

左「うちの殿が水虫だっていったい何人のひとに言いふらすおつもりですか」

慶「いいじゃねえかよ。そういうものは隠すからやらしいんだ」

三「俺はムッツリではない」

左「悲しいくらいオープンなんです」

三「いいか。兼続に俺が足白癬であることを言ってみろ。愛だ義だと言いながら俺は数日間、足白癬の完治に向け監禁されるだろう……」どきどき

慶「傾いてるねー」

左(なにかを期待している殿……)

慶「んー……じゃあ、水虫であることを隠してチクるか」

左(?)

慶「実は三成はみ(ズキューン!)で、毎晩毎晩むずむずして眠れないらしいぜ。お前の愛(と義)でどうにかしてやったらどうかね?」

左(えっ、援護射撃来た! 今、孫市さんが援護射撃していた!)

三「それならいい」

左「よくねえだろ?! 直江殿なにか勘違いするぜ?!」

三「む」

慶「そこはアイツの義がフォローするだろ」

三「そうだそうだ」

左「えっ、左近悪者?」




幸(三成殿が水虫……! 私もです!)








07/12
(増える水虫。水虫の時期がやってきましたネ!)