そして今日も眠れない

左 + 三 + 兼










三「俺としては、左近にはもっと女らしくなってもらいたいと思う」

左「左近としては、殿が雑草を食べることをやめてほしいと思います」

三「俺が雑草食べなくなったらお前は女らしくなってくれるのか」

左「考えさせてください」

三「チッ、チッ、チッ、はい終わり」

左「短いです」

三「なに? 何秒必要なのだ」

左「…………1892160000秒くらい」

三「一年か!」

左「さすが、計算がお早いですね」

三「褒めたところでなにも出ないぞ」

左「なにも望んでいません」

三「無欲なやつだ」

左「あ、でもありました」

三「なんだ」

左「殿が左近を使って奇妙な萌えにひたることと、殿が雑草を食べることをやめることと、殿が変なダンスを踊ることと、殿がムダ毛の処理を怠ることと、少しお休みが欲しいことです」

三「強欲だな」

左「え、ダメですか? ダメなんですか?」

三「ダメだな。どれも俺にとって大事なことだ」

左「ムダ毛を伸ばすことが?!」

三「左近が処理してくれるんだもん。……左近、頼りにs

左「左近は殿専属ムダ毛処理機なんですかっ!」

三「……性欲処理機と言われるのとどっちがいい?」

左「いやだああああああ!」

三「だろ。それだったらムダ毛処理のほうがいいだろう」

左「選択肢が悪辣すぎる。左近を人間として扱っていない」

三「左近、知っているか。恐怖のミルク飲み……」

左「その先を言ってはいけません」

三「言わせてくれ、お願いだから」

左「そんなに言いたいんですか、下ネタを」

三「……うん」ポッ

左「殿、真顔で顔を赤らめないで下さい」

三「じゃあマヌケな顔をして赤らめろというのか。耐え難い屈辱だぞ」

左「いやそういうことじゃなくて、この場面でね」

三「左近は俺になにを求めているんだ」

左「だから、左近を使って奇妙な萌えにひたることと、雑草を食べることをやめることと、変なダンスを踊ることと、ムダ毛の処理を怠ることと、少しお休みが欲しいことです」

三「お休みって……、左近、今は週休二日制にしているではないか。なにが不満なのだ。俺なんか土日もなく馬車馬のごとく働いているぞ」

左「土日も左近は殿の目覚まし時計に使われているじゃないですか。ゆっくり寝たいです」

三「……むう、難しいな。よし、兼続に説教してもらおう」

左「え、愛欲と煩悩ですか?」

三「愛欲はさておき煩悩だ。煩悩とはこの場合睡眠欲だ」

左「説教よりも実際に眠らせてください」

三「だから睡眠についてその欲のおこがましさを説教してもらうのだ。まて、今電話するから」

左「電話って、殿、電話って」

三「ケータイだ!」しゃきーん

左「これは……ワンセグ! あのテレビが見れる!」

三「気になる競馬や相撲もこれでバッチリだ」

左「ちょ、いいな。左近もそれがいいです」

三「まて、兼続に電話することが先だ」ピポパポッ

左「……」

三「あ、もっしー?」

左(もっしー?!)

三「俺だ、俺……、ん? オレオレ詐欺だと? 貴様不義だぞ!」

左(間違えられてる)

三「……そうだ、石田三成だぞ。なんだ。『もっしー、三成だけどー』とか言ってほしいのか……、え? もっしーだけでも驚いたって?」

左(直江殿も驚いたんだ)

三「気にするな。ところで、左近が路頭に迷いかねない勢いだからお前の愛と義でどうにかしてやってくれまいか」


ぴんぽーん


左(あ、来客)去



三「む、いいのか。すまないな。なんだか煩悩に負けている不甲斐ないやつだが、よろしく頼む」

左「はいどちらさまですかー」

兼「ああわかった」

左「いるー!?」

三「おお、兼続早いな」

兼「最近の携帯は便利だな」

左「携帯にそんな移動機能はついていませんよ!」

兼「私の携帯の名前はいつでもドア」

左「悪辣なパロディ!」

兼「ところで、携帯で三成のことを調べたのだが、幼名は佐吉といったらしいな」

三「なんだ」

兼「……かわいらしいな」でれぇっ

三「なにがだ」

兼「なんだろう、この佐吉っていう、カッパみたいな名前」

三「俺にケンカを売っているのか」

左「カッパにどういう偏見を持っているんですか」

兼「だめか?」

三「思想の自由は認めるが」

兼「そうか。まあいいか。なんだっけ、煩悩だっけ」

三「そうだ。左近が惰眠をむさぼりたいと言うのだ」

兼「島殿、早起きは三文の得というだろう」

左「あなたお金大嫌いのくせに!」

兼「むう、確かに汚らわしいが、別に金銭のみではないぞ。たとえば、寝起きの三成が見れるとか」

左「毎日見てりゃいい加減おもしろみもありません」

三「お前は俺の寝顔になにを期待しているんだ」

左「だって……」

兼「じゃあ一緒に寝れば?」

左(超投げやりだ)

三「俺はいっつも左近と一緒に寝ているぞ」

兼「お、どういった遊戯が行われているのかな?」にまにま

左「殿の寝言を数える遊びです」

三「らしい」

兼「色気ない」

三「あってたまるか」

兼「つまんない」

左「下世話ですよ直江殿」

三(あれ、こいつなにしに来たんだっけ)

兼「ま、私はそろそろ帰る。しょこたんがテレビに出る時間だし。今日はガンダムのコスプレしてくれるんだぞ」

三「さよなら兼続」

兼「さよなら三成」

三「……」

兼「……」

左「なにを見つめ合ってるんですか」

三「いや、兼続の幼名を思い出してな。与六かア、って」

兼「佐吉かー、って」

三「なんか、うっかり八兵衛、とか、風車の弥七、みたいだなあって」

兼「あ、うっかりしていた。島殿、どうしても睡眠を取りたいんだったら私の城へ来るといいぞ。うん。私が子守歌を歌ってやるから」

左(うわっ、断りにくっ)





(直江は愛欲と煩悩を勧める宗教です)
06/28