愛の結晶

五人










三「きゅっ、きゅっきゅっ」揺

左(わ……殿がまた変なことし始めた!)

三「きゅきゅっ」

左(なんだろうあの手の動き……、ろくろ? ろくろなのか? イメトレ?)

三「近江牛……」

左(なんかぼそっと願望言ってる!!)

兼「鮒ずし」くねっ

左(踊ってる人が来た!)

幸「しゃかしゃか!びん細工手まり!」

左(うっ、動きがマラカス……!)

慶「彦根仏ダァーン!」ぐおんぐおん

左(こっちは歌舞伎か……)



三「きゅっ、ヒョボボボン、ヒョボボン」

左(あれは……一体なにを表現しているというのだろうか……)

兼「よし。今日も調子いいな」

三「ああ、カンペキだ」

幸「真田頑張ります!」

慶「傾奇者だぜー!」



左(なにが始まるっていうんだ)



三「キュッキュッキュキュッ、タンタタータターンターン」

兼「だんだーんだっだだーんだーんだんだん団子!江州だーんご!」くねっ

幸「まっ!」しゃかっ

「「「まっ!」」」

幸「まっ!」しゃかっ

「「「まっ!」」」

幸「まあーい!」シャウト

「「「まあーい!」」」

幸「近江米! まっ!」

「「「まっ!」」」

幸「近江米!」

三「ヒョボボボヌヌ……、ヒョボヌヌヌ……、チキチキチキシェキシェキジェキジェキダダダッダダダダダダ!」

慶「近江の牛うかわの寿司ふなの寿司沖の白石他の地域が敵うはずないし!」

三「ステーンテンテンキュッキュッ」

兼「甲賀流、忍者屋敷」くねっ、すたっ、しゃき

慶「雨が、降りき」

幸「シャッ……シャッ……シャッ……シャッ……」

慶「忍が細道を駆く」

三「タタタタタッ」

慶「そこへ、ひとりの影が現れる。敵なり。影はくないを俊敏にひとつ、ふたつ飛ばす。忍は自らの得物を手にすと、機敏にそれをはじき返しき」

幸「シャッ!」

三「キュイーン!」

幸「シャッ!」

三「キュイーン!」

兼「何者なるか」

慶「忍は問ふ」

兼「私は甲賀流の忍なりぞ、知ってゐての狼藉か!」

三「タッ……タッ、タッタッタッタタタタタ……」

慶「足音は遠ざかり、忍はまた変わりなく歩み始めき」

兼「甲賀流忍者屋敷!」くねっ、すたっ

三「スタターンタターン、キュッキュッ、キュッ」

幸「シャッシャッ」

兼「大一!」

幸「大万!」

慶「大吉!」

三「石田の家紋! ハケドドン……ハケドドン……。ご清聴ありがとうございました」

「「「たー」」」






左「……これは、夢?」

三「左近、左近、見たかいまの!」

左「今ちょっと夢見てたんで、残念ながら」

兼「なにっ、不義ではないか! 私たちの三成の結晶を!」

左「いや……、それっぽいのを見たような気もしますが、多分、見ていないです。ええ、もちろん。殿のDJっぷりも真田殿のシャウトぶりも皆さんのコーラスっぷりも前田殿のラップも、ええ、即興劇だって見ていませんよ。左近は」

慶「感想は?」

左「……あんたら何してんすか!?」

幸「えっと、三成殿の故郷、近江のPRを……」

左「だからってなんで、あんな無節操なカオスなものを作り出したんですか!」

幸「えっと……、あの……ゥヴォイ!」

左「!」びくっ

三「幸村は怒ると、デスボイスをするのだ」

左「怒ったんですか今!」

兼「ぷりぷりしてるではないか」

左「え?」

幸「……」ぷりぷり

左「うへあ・・・」

慶「んー、ダメだったかー……、やっぱり、もっとロックにしようや」

三「コーラス増やすか?」

兼「いや、私のダンスをもっと激しく、色々な要素を取り入れればいいのだ。いっそ、サンバとかコサックとか……」

左「あれ以上おぞましいものを作り出す気ですか」

幸「あ! じゃあ、パレードにしましょう。兼続殿がセンターのダンサーで、サンバのような格好をして……」

兼「なにっ、なら、私はどこに愛を背負えばいいのだ!」

三「俺がふんどしに書いてやる」

左(ふんどしに『愛』って……、下手したらとんでもない下ネタじゃ……)

幸「それにしても慶次殿の口上、すばらしかったです。もう惚れそうです。真田ぼんぼり!」

慶「お、ありがとよ」(ぼんぼり?)

兼「確かにすばらしかった。一瞬聞き惚れてしまった」(ぼんぼり?)

三「うむ。俺も鳥肌がたった」(ぼんぼり?)

幸「ですよねですよね。また聞きたいです」(スルーされてしまった……ぼんぼり……)

左(皆ぼんぼりノータッチ!? 一体なにを表現したいんだ真田殿は……)


ぐう


三「左近……、近江牛……」

左「どうぞ地元へ帰ってください」



(みんな殿が大好きなんだYO)
06/21