rapture
さことの
「む、ニキビができてしまったぞ」
「ま、大変ですね」
「左近、お前の肌はいつ見ても美しい・・」
「左近相手に恍惚とするのはよしてください」
「ならどうすればいい」
「普通に『左近の肌はニキビが無くて年不相応ですね』とか言えばいいと思います」
「左近の肌はニキビが無くて年不相応で美しい・・」
「殿、あまりおっさん相手に美しいとか言わないで下さい」
「柄にも無く照れるのか」
「殿がしょっちゅう言うので照れはしませんけれど」
「なんだつまらん。与えすぎてはならぬのだな。よし、これからはそう言わない。左近、お前の肌はボロボロだ」
「真逆を言えばいいというものでもないですが」
「ワガママ左近!」
「え、俺ってワガママですか?これ以上にないほど自分を殺しているつもりですか」
「なに、鬱か?どうした左近。今お前という人材を失くすことは非常に惜しい。思いとどまってはくれぬだろうか」
「殿、デリケートな問題にはもっとオブラートにものを包んでください」
「オブラートになにを包むのだ。優しく包装・・、左近を優しく包装・・・。左近、俺にお中元をくれるのか?」
「えっ、やりませんよ」
「なんだバカ」
「バカって。バカと言った人がバカなんですよ」
「今左近は三回バカと言ったから左近のほうがバカだ」
「そんな子どもみたいなことよく言いますね」
「元をたどれば左近がバカと言ったやつがバカと言ったのだぞ」
「殿は今合計五回バカといいました」
「・・・バカッ」
「六回目です」
「こんの・・うつけものめ!お前は巨大なこどもだ!」
「いつまでも少年のような純真なこどもの心で戦にいどみます」
「…左近、屁理屈もそのうち理屈になるのだな」
「どういう心変わりですか」
「別に。お前には関係ないぽん」つーん
「熱ありますか?」
「いや、今ぽんぽんだ」
「おなかいっぱいなんですね」
「うむ」
「・・・何歳だよッ!」
「少年のような心を持ってみたのだが、ダメだったか」
「あ、取り乱しましたすみません。まあ、いいんじゃないですか?たまには」
「その言い草、なんなのだ」
「なんだといわれましても・・」
「左近、俺の名を言ってみよ!」
「殿」
「・・・ちがうっ」
「あ、はいはい。石田三成さんでぃーす」
「……」ゴンゴンゴンゴン
「わ、ちょ、なに自虐的な方向に走ってるんですか」
「このぶつけようのない苛立ちを…ちょっと」
「ぎゃあああ!血が出てますよ!」
「む、ニキビが潰れたのか」
「わああ・・・」
「なんだその残念そうな顔は」
「もう、この人、見てておもしろいけど疲れるな、って」
「バカッ!」
「七回目です」
05/31