愛の更正記録

四人










左「とのとのとのとの」

三「さこんさこんさこんさこん」

左「とのとのとの」

三「さこんさこんさこんさこんさこん」

左「とのとのとのとのとのとのとのとのとのとの」

三「さーこん!さーこん!」




幸「なにをしてらっしゃるんでしょう、あのお二人」

兼「よくあるだろう。バカップルがひたすらにお互いの名前を呼び合う、あれだ」

幸「ということはあのお二人、バカップルなのですね!」

兼「しかも、だ。お互いに本名で呼び合っていないところがミソだ」

幸「味噌…ですか。赤ですか白ですか?」

兼「ん?どちらでもないと思うが」

幸「合わせたか…手ごわい」

兼「幸村がよくわからないぞ」

幸「分かられたらたまったもんじゃありません」

兼「なんでそんなに反抗的なんだ?」

幸「え、私いい子じゃないですよ?」

兼「そうなの?」

幸「バイキンマンくらい悪い子です」

兼(よい子だ…)

幸「今日は仲の良いカップルの仲を裂きに行ってきます!カップルクラッシャー真田!行くぞッ!」走

兼「あ、幸村、それは不義…」



三「さこんっさこんっさこんっ」

左「とのとーのとーののー」

幸「うおおおお・・!」

三「さこ…」

幸「クラッシュ!クラッシュ!」ぶんぶん

左「わっ、ちょ、こんな場所でいきなり十文字槍を振り回さないでくださいよ!」

三「幸村…どうした」

幸「すみません、私の中のバイキンマンがささやいたんです。『やっちまえ』と」

三「そうか、それならしかたないな」

左「納得しちゃだめです」

三「む」

兼「幸村っ、ダメだろう!不義をするなと」めっ

幸「でもカップル見てると歯、抜きたくなるんです」

三「俺の歯が目的か!」

左「左近の歯も目的ですか!」

幸「はい、主に」

三「俺の歯を抜いてどうする気か!下の歯を屋根の上に投げるのか!」

幸「ちゃんと育つように念じて投げますから」

兼「歯が育つのか?屋根に根をはって?」

左「育つんですか。育つんですか。大きくなるんですか」

三「佐和山城もしゃちほこに恵まれ立派になるな」

左「歯がしゃちほこになるんですか!」

三「しゃちほこ代わりだ」

幸「この幸村、しゃちほこのように立派になれよと命じます」

左「歯に!」

兼「なかなか壮絶だな…。あれだ。佐和山城は、虫歯予防を謳うクリニックになればいい」

左「大きな歯を背景に!」

兼「さすれば、人の和も得られよう」

三「わかった。具体的にどうすればいい」

左「わかっちゃった!」

幸「佐和山にくると8020になります!とか」

三「なんだそれは」

左「八十歳になっても歯を二十本残そうってやつですよね。やめてください。佐和山に変な因縁つけるのを」

兼「ほかにも、歯垢がダバッて取れるとかどうだ」

幸「乳歯が永久歯になるとか、口臭改善とか」

左「根も葉もない話を作るのはやめてください。不義ですよ、不義」

兼「なに?!不義…あ、確かに不義だ。しかし友を優先することが私の義!」

三「さすが兼続。なら兼続、俺の頼みを聞いてくれるか」

兼「まかせてくれ」

三「佐和山城に歯のシンボルを作るために幸村に歯を屋根に向かい投げてもらう」

兼「私の出る幕ないではないか」

三「いや、ある。幸村が投げる歯に、お前の歯を抜擢した」

兼「なんと!」

三「お前の前歯は形もよし、色もよし、健康そのものだ。片方くれ」

幸「…」わきわき

左(あ、準備してる)

兼「ちょ…ま、おまえら…待て…」

三「さあ、お前の前歯いただこうか」

幸「真田がんばります!」

三「行くのだ、幸村!日ごろのストレスを晴らすかのごとく歯を抜くのだ!」

幸「はい!」ばっ

兼「…」ぷっつん

左(…逃げよう)去

兼「お前ら…いい加減にしろ!不義だぞ不義!」がばっ

幸「!」避 バッ

三「ひっ!」

幸「あ…」(逃げ遅れてる)

兼「不義の申し子には愛で更正してやる!」



ぶちゅうううう


三「・・・・」白目

幸「歯、抜いてもいいですか?」

兼「ダメ」



05/20