向上心
三 + 左 + 兼
「よく考えてもみろ」
「なんですか?」
「ブロッコリーなど、木ではないか。人間が食べるものではないだろう?」
「木じゃないので食べれますよ」
「いや、木だろうあれは。カリフラワーと同類の」
「木に見えるかもしれないですけれども、食べれますよ」
「左近は好きなのか?」
「ええ、まあ」
「木が好き…木を食べる…、左近が木を…。あーダメダメ。なんも韻を踏んでいない」
「別にそういう言葉遊びは…」
バタンッ
「三成ー、遊びに来たぞっ」
「直江殿…、この暑い時期に手土産も無くどうもいらっしゃいませ」
「む、氷を持ってきた。安心しろ」
「カキ氷だー。兼続すごーい」
「あ、カキ氷機はないぞ」
「佐和山にもありません」
「お前、本末転倒なヤツだな。いいよ氷そのまま食べる」ガリガリ
「しかし最近、暑いな」
「そうですねえ。殿がいきなり夏バテしたとか言い始めて困ってるんですよ」
「そしたら左近が『殿は野菜不足です』とか言い始めて困っている」
「三成はどんな野菜を食べるのだ?」
「ピーマン」
「おお!ピーマンが食べれるのか!すごいな」
「けど直江殿、ピーマンとねぎしか食べないんですよ?」
「にんじんは?トマトは?ほうれん草は?」
「あー…、お前な、ほうれん草とか食いもんではないぞ。草だ草。ひらべったい草。あんなの座布団にでもしておけ」
「不義」
「あんなものを俺に食わせる左近が不義」
「いきなり左近に不義の業を背負わせないでください」
「島殿、愛をこめて調理すればよいのだ」
「愛、ですか?」
「そうだ。私の背中にもあるだろう。愛が」
(アレって確か…、愛染明王…。たしか煩悩と愛欲を向上心に変換して頑張れ!的な…)
「左近、俺はいやだぞ。お前の煩悩や愛欲のこもったほうれん草など。ふざけるな言語道断だ怒るぞ」
「まだ左近はイエスと言っていませんからね」
「兼続、左近にそれを強要するのならお前の愛を示してみろ。主に煩悩を」
「……ガンダム…」ぼそっ
「え?」
「いやなんでもない。よし三成、私の愛(煩悩)を受け取れ!」
「俺がターゲットか?!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおお!」対抗
(ああ…殿までもが煩悩で向上しようとしている…)
「それそれそれそれっ!義ビーム!愛ビーム!」ちゅいんちゅいんっ
「お前ッ!お前の愛は俺に対する攻撃なのか!」
「愛憎だ!」
「アイゾー!?モリゾーではないのか!」
「どうだ、これが俺の愛だ」
「よくわかった。左近、わかったか」
「え?え、はあ」
「つまり、この義ビームでほうれん草を焼き、調理することが愛だ」
「でも左近は義ビームなるものを撃てません。むしろ打ちたくありません」
「バケモノッ!」
「バケモノ?!」
「噛んだ。バカモノッ!愛で向上するのだ!」
「兼続、人んトコの軍師をバケモノもといバカモノ扱いしないでくれ」
「ごめんちょ」
(ちょ?)
「とりあえず島殿、愛で向上するとはこういうことだ。つまり、三成のために義ビームを習得し、ほうれん草を調理して食べさせる」
「はあ…」
「兼続、氷はまだあるか?」
「ああ、ある。はい」ごそごそ
「ありがとう」
「え、ちょっと待ってください。今、懐から…」
「手が冷たい人は心が温かい。体全体を冷たくすれば心が熱い人間だ」
「殿はなにをしているんですか」
「ん?ほうれん草冷やしてる」
「ほら、三成は島殿が義ビームを習得するまでほうれん草が腐らないようにしてくれている。さっさと向上したまえ」
「はあ…。へいやっ」ぺそ
「・・・。なんだそのやる気の無いビームは」
「それ以前にいきなりビームを撃てた俺を褒めてください」
「ああ、よくあるよくある」
「そうなんですか…」
「あー・・・」
「三成?」
「殿?」
「見ろ、ほうれん草の顔パックだ。冷えピタでもある」
「・・・」
(あ、ヤバそうだな)逃
「不義だああああ!」ちゅいんちゅいんちゅいん
「うわああ! 理ビーム」ちゅいんっ
05/14