カタコイ

左近 + 三成










「左近…」ふう

「どうされましたか。哀愁漂ってますよ」

「いや、どうしても実らない想いを抱えるとはこんなにつらいこととは思わなかったのだ」

「……春がキター!!」

「ええい怒鳴るなバカモン」

「すみません。いや、とうとう殿に春が来たのかと思っておもわず、ええ」

「…しかし春だな」

「…いやあ、春ですな」

「こう、暖かくなって桜も咲いているしな」

「違います」

「なにっ?!アレは桜ではないのか!左近どうしよう俺幸村にあれ桜だって教えちゃったよ!」

「いやあれは桜ですけれど春の意味合いが違いました」

「なに?春とは他になにがあるのだ」

「ほら、恋ですよ恋」

「…ああ…」

「なんですかその目は。まるで蔑むような哀れむような。左近ココとっても生きにくい」

「いや、春になると頭が沸くヤツもいるんだなあ…と再認識させられた」

「それって左近のことですか」

「…ははっ」

「微妙に笑わないで下さいよ目が笑ってないですよ。目をそらさないでください」

「……ははは…」

「うわあいつに無く殿が冷たいうえにしらばっくれてる」

「まあそんなことはどうでもいいのだ」

「そうですね。…結局なんなんですか。実らない想いって」

「ああ、左近が勘違いしたそれか。いや、どうしても行きたいところがあるんだ」

「行けないほど遠いんですか?」

「ああ、遠い。そして帰ってくるのに十年は必要かもしれん」

「わ、その間左近死んでるかも!」

「ちょっとリアルで不吉だぞ」

「リアルって」

「そしてそこに行って、どうっ、してもやりたいことがあるのだ」

「けれど流石に十年はアレだから結局行けずに実らない想いということですか」

「そうだ。左近は物分りがよくていいな」

「ばかにしてるんですか」

「ははは…」

(なんだか、殿は空回りしているな。そんなに行きたいところが…。しかしこんな殿も珍しい)

「…はあ」

「えっと、殿はどこに行ってなにをやりたいんですか?」

「ドイツに行ってハム職人の修行をしたいのだ」

「絶対にやめてくださいね」

「…はあ…、どうしても、実らせたい想いが…」

「なんでドイツに行ってハム職人なんですか。というかどうしてハム職人になりたいんですか」

「…ハム」

「……」

「あー、左近。みっちーはちょっと疲れたから寝る。起こすなよ」

「ええみっちーが誰なのかよくわかりませんが殿がお疲れなのはよくわかりました」

「夢の中でハム職人になれますように!おやすも!」

「はいごゆっくり」