直江病

三成 + 左近










「そういえば、左近はかの武田信玄に身を寄せていた時期があったとな?」

「ああ、ええそうですね」

「その時の話を聞きたい」

「え?どんなことですか?」

「どんなことでもいい。かの『イカの虎』とまで呼ばれた人間だ。興味もわくものだ」

「イカの虎…?!」

「ああ。なんだ左近、仕えていたくせに知らぬのか?」やれやれ

「知るわけないじゃないですか!イカの虎なんて!」

「そういうものか」

「そういうものじゃありません!」

「じゃあどういうものだ?」

「イカの虎とか意味がわかりません。矛盾もいいところです。それを言うなら『甲斐の虎』です」

「は?」

「え?」

「なにを言っているのだ。幸村もこの間言っていたぞ。『イカの虎』、と」

「おそらく真田殿は直江殿の病にかかってるんです」

「へえ、初耳だ」

「だからあまり真田殿の言うことはあまり信じなさんな」

「それは左近、幸村がウソツキだと言いたいのか」

「そんなことは言ってません。ただ、直江病なので気をつけてくださいということを」「いくら左近とて幸村を愚弄することは許さぬぞ」

「まあそれは置いといて」

「どこに置くのだ」

「揚げ足を取らないでください」

「どこに置くのだ」

「……ここらへん?」

「ふむ。部屋の隅か。ずいぶん遠いところへ行ってしまったな」

「ええ、二度とこの話題に触れないよう、遠くへ」

「よし、掘り返すぞ」

「いいですよそんな宣言しなくても」

「宣言しなくともいいのか?太っ腹だな」

「太ってませんがな」

「揚げ足を取るな!」むっきい

「殿は自分を少し振り返るべきです」

「どうして俺が怒られてるのだ」

「正論です」

「そんなことはどうでもいいが左近、最近暖かくなって俺は嬉しいぞ」

「どうでもいい?!…まあいいや。そうですね、殿も活動しやすい時期になってまいりました」

「雪を見るのは好きだが、寒いとなんか、こう…、動きが鈍くなるのだ」

「冬ですからね」

「秋はやたら腹が減るし、冬はやたら眠いのだ。まともに活動できるのは春くらいだぞ」

「あれ、春は花粉がヒドイからって」

「ああそうだったのだ。イヤなことを思い出させてくれてありがとう」

「いえいえ」

「そうだ、春は花粉で鼻水が止まらないのだ」

「ええ、左近の枕で鼻水を拭っていた日は真剣に辞表を書こうかと思いました」

「書くな書くな。せめて布団の端にしておくから」

「自分の布団だったらいくらでもかまやしませんがね」

「それは俺がかまうのだ」

「左近の布団は左近がかまいます」

「つまり、俺に鼻水をずっと垂れ流しておけと、そう言うのだな」

「いえ、普通にティッシュを持ち歩いて欲しいだけです」

「ああ、そうか。けれどポケットティッシュなんぞ持っていないぞ」

「左近がたくさん持っています」

「そうかそうか。どうもティッシュ配りには避けられるのでな」

「そういうオーラですから」

「左近はたくさんもらいそうだな」

「ええ、そういう性分なんでしょうね」

「そうか、なら左近。これをやる」

「え」

「俺はこれにてドロンする!」ドロン




「っ…とのー!!」








いつからニンジャになったんです?