父親自慢

義トリオ + 左近










三「俺は、イカになりたいと思う」

兼「イカに…か?」

左「殿、画餅です」

三「なりたいものはなりたいのだ」

幸「兼続殿にですか?」

三「は?兼続?イカだと言っているだろうが」

兼「そうだぞ幸村。ほんの一瞬話題にあがって私の心臓は跳ね上がったぞ」

幸「はあ、すみません。けれど兼続殿の兜が…」

三「もう兼続はどうでもいい。イカになりたいのだ」

兼「どうでも……」

幸「それまたどうして急にイカになりたいなんて?」

三「うむ。あのやるせないぐにゃぐにゃ感に憧れてな」

幸「ぐにゃぐにゃ感…」

三「こう、墨を吐き出すのもたまらん」

幸「マニアックですね」

三「まあそれはおいておいて、左近、俺はイカになれると思うか?」

左「ええそれはもう殿なら頑張ればなれるんじゃないんですか?」

兼「結構投げやりだな」

三「左近!」

左「はい?」

三「俺は…いつものように『なにをアホなこと言ってるんですか、無理に決まってます。頭にウジわきましたか?』と言ってほしかったのに…」

左「は?」

三「いつものように呆れながらも苦笑いでしかたないなあ、というオーラを求めていたのだ!」

幸「三成殿…、かわいそうに…」

兼「島殿、不義だ」

左「どうして俺が責められてるんですかい」

幸「そんなマゾな三成殿が大好きです」

三「ん?あ、ああ、ありがとう」

兼「そんなに気に病むな、三成。幸村は天然だ」

三「やんでないやんでない」

幸「私は天然じゃないですよ!」

兼「本物の天然こそそう言うものだ」

三「やーいやーい、てんねーん!」

左(何歳だこの人…)

幸「三成殿…ひどいです、このキツネヤロウ!」

三「…ぬっ…、いま空耳アワーがはじまったっぞ!」

左「始まっておりません」

兼「いや始まりましたぞ。確かに幸村は『このキツネヤロウ!』っぽい暴言を吐いた」

幸「え、はいてませんよ?」

三「しらばっくれるな」

幸「違います、私は『このきつねうどん!』と言ったのです」

兼「ムリがあるぞ。限界を知れ」

幸「私は三成殿と話しているのです」

三「え、あ、うん。…で、なに?」

左(あ…、この人、人の話聞いてなかったのか)

幸「もうどうでもいいです」

兼「すねるなすねるな」

幸「拗ねてません」

兼「気に病むな。三成のやんちゃぶりは今に始まったことではない」

幸「へえ、そうなんですか」

兼「ああ、そうだ。たとえるなら…高校生になって夏休みにこっそり髪を脱色するくらいやんちゃだ」

左「わ!超中途半端!」

三「そんなことはしないぞ」

兼「もののたとえだ」

幸「それは…だいぶやんちゃですね」

左「わ!なっとく!」

兼「幸村は素直でいいな。末っ子のごとく素直でいい」

三「また物のたとえか」

兼「そうだな。例えるなら慶次が末っ子で、三成が長男かな」

左「あれ、真田殿が消えましたぞ」

兼「幸村は三男だ」

三「ほおう。長男か。悪い響きではないな」

兼「私は次男だ」

幸「謙虚なんですね、兼続殿は」

兼「うむ。そして注目の島殿だが…」

左「え、やめてくださいよ。俺は勘弁してください」

兼「四男だな」

左「人の話を聞いてくださいよ」

三「…そうか。俺は老け顔の弟を持ったな」

左「悲しそうな顔したってその暴言はごまかせませんぞ」

幸「じゃあ父はやはり、御館様ですね!」

兼「なにを言う、謙信公に決まっているだろう!」

三「秀吉様だ!」

幸「どうしてですか!御館様のあのほがらかな笑顔に茶目っ気のある性格、父にはピッタリです!」

兼「あんな仮面の父なぞもったら子どもがグレてしまうだろう。ここはやはり物静かでどんと構えている謙信公が適役だ」

三「こらこらこらお前ら、武田も上杉もダメだ。武田は王道がうんたら言っているからありきたりなことしかしないに決まっている。上杉は闘争好きの病気みたいな人ではないか。あんな父を持ったらケンカ好きになってしまう。ここはやはり才気溢れるあの太陽のような秀吉様に決定だ。どんぴしゃりだぞ!」

兼「サルは父にはなれぬ!」

幸「太陽みたいなのは兜だけです!」

三「ぬっ…」ぴきっ



「「「・・・・」」」





左「い…、胃痛が……」






コノヤロウ!