ダイイングメッセージ

暴走義トリオと凄く可哀想な左近









幸「え、三成殿、今は会えないんですか」

左「すみません。今、殿は直江殿と密談の最中で」

幸「兼続殿と?」

左「なんでも、誰にも聞かれたくない話だそうで」

幸「……そうなのですか。残念です」

左「すみませんねえ。じゃ、お帰りはあちらになります」

幸「会えないんじゃあしかたありません。素直に帰る……と思ったらそうは問屋が卸さない!」バッ

左「え……、ちょ、何キャラですか」

幸「今からくのいちキャラになります。なはなは」

左「つまり盗聴するということですか」

幸「そうです。なは」

左「なはって言われても……」

幸「すみません。どうにも田舎者ゆえ、くのいち独特のに……、に、にあはという発音ができませんのでなはなは言わせていただきます」

左「はあ」

幸「あ、話していますね。一体なんの話なんでしょう」

左(最近この人図々しい)



三「――ということになる。オーケイ?」

兼「オッケーオッケー。そこで私がカメラを構えてパシャッてすればいいんだな」

三「だ」



幸「なんの話だと思います?」

左「え……、まあ、よからぬことを企んでいるなあ……と」

幸「カメラをパシャッ……?」



兼「そういえば、とうとう掘ったのか」

三「掘った。正々堂々とな。清々しいほどに」

兼「で、どうだった」

三「疲れた」

兼「まだ若いくせに」



幸「だっ、誰を掘ったんだ!」

左「え、人とは限らないでしょう。むしろ人を掘るって不自然だと思います」



三「おかげで汗をかくわ袴は汚くなるわ腰は痛くなるわ」

兼「そんなヤンチャができるのも若いうちではないか」

三「とは言うがな、これでぎっくり腰になったらすごく恥ずかしいだろう」

兼「もっと上手くなればいいではないか」

三「そんな技術いらん」



幸「真田の軍略的に想像しますと、三成殿は誰かを掘った。そして上手くないらしい。次はハメ撮りするらしい……ですが、なにか異論は」

左「ないわけないじゃないですか。うちの殿を床下手みたいに言って」

幸「異論はそれだけですか?」

左「うちの殿は変態ではありません。絶対に変態ではありません。それでもって左近に一途な純情な子なんです。どこぞの知らない人を掘るなんてしません。絶対にしません。それでもって直江さんは不義が嫌いなのでハメ撮りなんてしません」

幸「でも、話の流れからして明らかに……」

左「うちの殿はハレンチなことをしてぎっくり腰になりそうになるほどひ弱じゃありません」

幸「……まあ、島殿に一途かどうかは置いといて。確かに、三成殿も兼続殿もそんな不義行為をするとはとてもじゃないが思えませんね」

左「置かないでください」

幸「……」

左「なんでそんな目で俺を見るんですか」

幸「別に」

左「……以前から言おう言おうとは思っていたのですが殿のお友達ということで遠慮していましたがやっぱり言わせていただきますけれどお兄さんなんで左近にそんな厳しいんですか。殿の前では穢れなんて知らないんだからってエンジェルアイズで笑顔を振りまくっていうのに左近に見せるのは般若のごとき顔ばっかりじゃないですか。ちょっと傷つくんですよ。あと殿に左近のあることないことを話すのはやめてください。武田にいたころの話って言うと殿はなんでも信じるんですから」

幸「……ふうーっ。……あ、すみません。耳掃除をしていたのでもう一度お願いします」

左「真田殿は左近が嫌いなんですか」

幸「好かれていると思っているんですか?」

左「えっ」

幸「え」

左「え……好かれているとか云々は置いておいて、ここまで敵視される理由が解せません」

幸「……別に、知らないほうが幸せって言うじゃないですか」

左「ですよねーっ」



兼「そういえば、最近気付いたのだが幸村と島殿は仲が悪いのかな」

三「俺も気になって幸村に聞いたことがあったが『今ではすっかり仲良しこよしです』って言われたぞ」



左「……」

幸「こっち見んな」



兼「というと、以前は仲が悪かったのか?」

三「というか、幸村が言うには、武田にいたころに精力盛んだった左近に処女を奪われそうになったらしくってな」

兼「ほう、大変だったな。幸村も」



左「ちょ……! おま……! な、なんですかその捏造……!」がしっ

幸「被害者がセクハラと感じたらそれはセクハラになるんです」

左「なんで左近が真田殿のケツ処女奪わにゃならんのですか!」

幸「そんなの、自分の胸に聞いてください。あと、手、離してください」ペソッ



三「それでも、今では仲良しだなんて言える幸村は本当に義の人間だな」

兼「だな。島殿も見習わなくてはならないな」

三「うむ」



幸「……ふふん」

左「……ッ! こっ、このアバズレが……! 最近殿が俺に背中を見せないと思ったらこんなところに理由がありやがった!」くわっ

幸「こっち見ないでください。妊娠してしまったらどうするんですか」

左「……もう、知らないんだから! 俺の名誉を返せー!」ダッ

三「左近、うるさい。なにを一人で……と、幸村?」

幸「あ、お邪魔しております。三成殿に会いにきましたら、こちらにいらっしゃると聞きまして」

三「人を寄せるなと言ってあったのに……」

兼「まあまあ。あまり島殿を責めるな」

三「で、左近はどこへ?」

幸「なにか叫びながらどこかへ行ってしまいました」

兼「疲れているのかな?」

幸「欲求不満かもしれませんよ」

三「また女遊びに行ったのか?」



左「ぎゃー!」ガタガタッ



三「……左近、うるさい」

幸「行ってみますか?」

兼「だな」

幸「焦って階段から落ちたのでしょうか?」

三「そこまで女遊びがしたかったのか、アイツは……」

兼「ブチブチ言うなって。心配してやれって」

三「……ん? あの辺りは……」

幸「しーまーどーのー」

兼「なんだあれは。穴が開いているぞ」

三「俺が昨晩必死に掘った穴ではないか」

幸「島殿対策に城内に罠を?」

三「いや、誰かひっかかったら兼続に写真撮ってもらおうと思っていただけだったが……。左近、いい気味だ。女遊びはもうするなよ」

兼「泣いているぞ」パシャッ

幸「……ふふん」



左(殿、友達は選んでください)






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