「左近に振り回される殿」









「左近、見てみろ、これ」

「なんですか、これ」

「そこで拾ったきれいな小石だ」

「……なぜそんな子供じみた行動をして楽しいのですか」

「いや、左近の反応が見てみたかっただけだ」

「……左近のリアクションをお望みか」

「うむ」

「わあきれいな小石! 左近にもそれを見つけた場所教えてくださいな」

「……すまなかった」

「わかってくれればいいのです」

「ちゃんと仕事をするから、二度とそんなマネしないでくれ」

「そんなマネをさせたのは殿でしょうに」

「左近が勝手にやったのではないか」

「殿がリアクションを望んでいるからですよ」

「しかしあんなリアクション、俺は望んでいなかったぞ」

「うわあそれすっごいチョベリバ」

「ちょべりばっ……?!」

「左近だってたまには怒るのですよ」

「怒っていたのか?!」

「ええ、とっても」

「……すまなかった」

「わかってくれればいいのです」

「これからはなるべく怒らせないようにする」

「ええ、お願いします」

「だが左近、なぜ怒ったのだ?」

「チョベリバチョベリバチョベリバチョベリバチョベリバチョベリバチョベリバチョベリバ」

「……すまなかった」

「いいえ」

(なんか今日は左近の様子がおかしいな……。月経か?)

「なにを考えていらっしゃるのですか」

「いっ、いや、別に。俺はこれから仕事に戻る」

「お願いします」

「……」

「……」

「……」

「……」

「左近」

「なんですか」

「なぜ、ついてくるのだ?」

「……」へらっ

「……?」(笑顔……?)

「もうこの子可愛すぎる!」びたんっ

「ほげっ!」

「おひげジョリジョリしたいななんてずっと思っていましてね本当にかわいい!」じょりじょりじょり

「痛い! 痛い!」

「なるべくバレないようにしたかったのですけど、やっぱり可愛すぎて可愛すぎて! あーもう!」じょりじょり

「……いい加減にしろっ!」げしっ

「いだっ」

「……はあ、はあ……。い、痛い……、顔が痛い」

「よしよし」なでなで

「……」

「あー、すっきりしました。ごちそうさまです」ぺこ

「左近……」

「ではまた、後で。お仕事頑張ってくださいな」

「……行ってしまった……」



てってこてってこ



(なんだか今日の左近は本当におかしいな。なぜ俺が左近にここまで良いように扱われているのだ。俺のほうが一応は主なのに!……まあいい。仕事だ仕事)


シャ


「あ……あれ? 左近? いつのまに……」

「殿、仕事をさぼってどちらにお出ででしたか」

「え……? 俺はついさっきまで左近と一緒に……」

「はあ? 左近はずっとここにいましたよ」

「……おねね様か」

「え? ん?」

「お前は俺に、おひげじょりじょりしたいと思ったことはあるか?」

「……はい?」

「ないのならいいのだが……ほげっ」どすっ

「意味がわからないことばっかり言って、仕事をさぼった言い訳ですか? 悪い子ですねえ。お仕置きしますか?」

「ぶばっ」

「色気のない反応ですねえ」

「左近、俺を笑い殺したいのか」

「まさか、喘ぎ殺してさしあげます」

(……これは、非常にまずいぞ。なぜ押し倒されているのか理解できん。なんなのだ今日は。左近がおかしい!)


シャ


「殿、言い忘れていましたけど……、ぶっ」

「左近!」

「あ」

「わ、えーと、あの。俺とお楽しみ中でしたか。すみません、失礼します出直してきます」

「待て左近! その反応は間違っている!」

「おやまあ、本物の左近が来ちゃったのね。もう。せっかく三成にお仕置きできると思ったのになあ」ぼむっ

「やっぱりおねね様!」(さっきのおひげジョリジョリは、おねね様の分身だったのか?)

「ねね殿……、殿にお仕置きってどんだけうらやましいのですか」

「んふふ、左近はだめだよっ」

「おねね様、いい加減にしてください。俺におひげジョリジョリしたり、お仕置きなんてしようとしたり……。分身してまでやることですか?」

「……あ、いや、殿」

「なんだ」

「おひげジョリジョリは本当に俺です」

「あたしはそんなこと知らないよ?」

「……」



シャ


「殿……、あれ?」

「左近……?」

「え、俺?」




問:本物の左近はどちらでしょう。






08/25