サコンタさん

とってもシュールな義トリオ









兼「最近、外に出ると電飾がチカチカしているな。目が痛くてかなわん」

三「お前もか、兼続。俺もそう思っていたのだ。一体、なんだってあんなチカチカさせるのだろうな」

兼「さあ。お前は知らないのか?」

三「知らんな。幸村は?」

幸「え……、いや、わかりません。なんなんでしょう」

兼「そういえば、なんか文字も書いてあったよな。メリー……なんたらって」

三「あ、あったな。なんだったか。メリー……ク……ク……くり(バーン)りす?」

幸「三成殿! なぜか今真ん中がよく聞こえませんでした!」

兼「また雑賀殿の援護射撃か……。三成、あまり危ない発言はするな」

三「あ、ああすまん。でもこんな雰囲気の言葉だったよな?」

幸「く、く、くるしみます?」

兼「なに、不義か?」

幸「たしか、誰かがくるしみますって言っていたような」

三「メリー苦しみます?」

兼「なんだか胸が苦しくなりそうだな。……確かに、電飾がチカチカして目が苦しい」

三「それのどこが楽しいのだ?」

幸「わかりません」

兼「……そういえば、昔に本で読んだことがある。この寒い時期に一人の少女が亡くなったそうだ」

三「関係あるのか?」

兼「ある。このメリークルシミマスは祭りらしい。しかしその少女は貧乏でメリークルシミマスを楽しめずに死んだらしい」

幸「なにが言いたいのかよくわかりませんが大変ですね」

兼「なんでも、あまりに貧乏なためにマッチを売っていたのだがマッチが売れず、路地でマッチをつけながら死んだとか」

三「マッチのつけすぎで死んだのか?」

兼「さあ。死の直前に、マッチの炎の中に七面鳥や祖母が見えたという話もある」

幸「眼精疲労ですよ、きっと」

三「いや、おそらくその少女はなにやら危うい薬物を使用していたに違いない。しかし貧乏でその薬物を買う金もなく、禁断症状で幻覚を見ながら死んだのだ」

兼「まあ別にそんなことはどうでもいいのだがな」

幸「そういえば、お話に聞いたことがあります。メリークルシミマスは誰かの死を悼むものだって」

三「それって、二十四日が前夜祭のやつか? それなら聞いたことがある」

兼「他人の死を祭りにするなんて不義ではないか」

幸「別に私たちはその人に義もなにもないんですけれど」

兼「その心意気がそもそも不義だ」

三「まあ二人とも落ち着け」

幸「……その亡くなった方っていうのが、磔にされ、手と足を杭で打たれていたとか。あと首もでしたっけ。それで、磔にした人たちの誰かがその人を槍で刺したとか」

三「……く、苦しいな。確かにクルシミマスだ」

兼「なんとも……、昨今の電飾チカチカの馬鹿騒ぎと不釣合いだな。不義ではないか」

三「で、どうすればいい」

兼「ん?」

三「いや、意味もわからずメリークルシミマスについて話し合ったが、結局どうすればいいのだ?」

兼「どうもしなくてもいいと思うんだが」

幸「……もし、メリークルシミマスが死の関連するお祭りだとしたら、その苦しみの連鎖を断ち切らなくてはならないかと」

三「それもそうだが、まずメリークルシミマスについてもっと調べなくてはならんな」

兼「ああ、そうだ。事実の確認が肝要だ」

幸「んー……、最近、よく耳にするワードはクルシミマスプレゼントです」

兼「私はサンタさんという言葉をよく聞く」

三「俺はクルシミマスツリーと恋人がどうとか」

幸「恋人?」

兼「ああ、クルシミマスは恋人と一緒に過ごせとかよく聞くな。多分、それはあまり関係がないだろう」

三「しかし、恋人のいない人間にはある意味でクルシミマスだな。まあ、俺には左近という人間が……」

兼「……」ポカスッ

三「なにをする!」

兼「すまん。今止めなくては後で腹が立つと思って。これも義と愛ゆえだ。許せ」

三「わかった、許す」

幸「とりあえずクルシミマスに話を戻しましょう」

三「んー……、サンタさん、というのは人名だろうな」

幸「そうですね、っぽいですね」

兼「サンタさんという人間がクルシミマスプレゼントというものをクルシミマスツリーに置いていく……のか?」

三「聞くな。知らん」

幸「でもそれっぽいですよね。じゃあ、サンタさんって何者でしょう」

兼「……! つまり、こういうことだ。サンタさんというのはクルシミマスに死んだ者のことだ。彼は自分の死を静かに悼むことなくお祭りとしている人間に腹を立てている。だからクルシミマスプレゼントを置いていくのだ。もちろんその中身は」

三「なんか、苦しそうなもの、か」

兼「そういうことだ」

幸「苦しそうなものって例えば?」

三「……ま、真綿とか」

兼「窒素とか……」

幸「恐ろしく想像力が欠如してますね」

三「……まあ、幸村だから多少の暴言も多めにみるぞ。うん」

兼「そうだな、幸村だし。若気の至りってことで。じゃあ、メリークルシミマスについてなにか解決策を」

三「なにを解決するのだ?」

兼「だから負の連鎖を」

幸「別にいいんじゃないですか? どうせみんな楽しんでいるんですし」

兼「お前! さっきと言っていることが違う!」

幸「今眠いんですよ」

三「そういえば眠いな」

兼「言われてみると眠いな」

幸「寝ましょう」

三「寝るか」

兼「寝よう」

幸「おやすみなさい」

三「ああ」

兼「グッナイ!」




幸「……島殿、オッケーです」

左「いやあ、すみませんねえ」

幸「別にいいですけど」

左「お礼にプレゼントあげますよ。殿が欲しがっていたポケットティッシュ」

幸「ありがとうございます。……でも、友をだますようなマネまでさせてそのお駄賃がポケットティッシュって」

左「だって殿、『俺はいつもティッシュ配りに避けられる』って気にしていたんですもの」

幸「聞いていません」

左「まあ助かりましたよ。殿、クリスマスも働くって言っていたので、いつプレゼント置こうか悩んでいたんですよねー」

幸「クリスマス?」

左「皆がクルシミマスクルシミマスって言ってたヤツですよ」

幸「あ、そんな名前なんですか。まあ別にどうでもいいです」

左「……んー、直江殿にはなにを置いておきましょうかね?」

幸「なにがあるんですか?」

左「殿用の新しい筆と、予備のアロマキャンドル、貯金箱、ライター、ドライバーセット……」

幸「じゃあこうしましょう」

左「あ、ちょ、なにするんですか! それは殿用に特別に包装したプレゼントだって……」

幸「これを兼続殿のプレゼントに。そして」ぶちっ

左「いっ……!」

幸「島殿の毛を三成殿のところに。これで完璧です」

左「……クリスマスくらい、クリスマスくらい、殿の変態さを忘れたっていいじゃないですか……」

幸「クリスマスじゃないんです。クルシミマスなんです」

左「……そういえば、真田殿ってサンタさんみたいですね。赤いし」

幸「そうですか。なぜ真田が赤いか知っていますか?」

左「どうせ返り血だなんだって言うんでしょう。そんなオチの見えた話なんて……」

三「さっ! 左近!」

左「!」びちっ

三「やっ、やばい、その格好はすごく……けしからん。うん……、はしたない……ふふ……」

左「……血?」

兼「ギャー! 幸村! いや三成も! なんたる義と愛な……いやいや……不義な、その……」

幸「……いつも二人に鼻血をかけられるからです。わかりましたか」

左「あ、はい。わかりました。ところで」

幸「はい」

左「左近がサンタさんだってことは内緒にしてもらってもいいですか」

幸「はい?」

左「いや、殿ってあんまりこういうお祭り好きじゃないでしょう。さっきお話していたときなんかいい例でして。サンタさんなんて絶対信じないタイプに違いありませんし。だから、こう、たまには不思議な気分になってもらおうかな、と」

幸「……別に、いいですけどね」

左「よかった、真田殿が納得してくれた」

幸「じゃあ私はそろそろ寝ますね。良い子は寝る時間なのです」

左「あ、じゃあ左近もそろそろ寝なくちゃなりませんな。おやすみなさい」

幸「おやすみなさい」






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(シュールって食べ物ですか?)