テンション高いのだよ

ミツサコ+曹丕









三「うぐ……あああ!」

丕「……どうした」

三「いかん曹丕、俺はそろそろダメだ」

丕「……そうか。短い付き合いだったな」

三「そっけないな。もっと心配して理由を聞いてみたりしてみてもいいと思うのだが」

丕「聞いただろう。最初に。『どうした』と」

三「もっと熱く!」

甘「どーしたんだあ、三成! おもしろい顔してんじゃねえか」ガシッ

三「甘寧か。聞いてくれ。この極悪非道のちょろ毛のせいで俺はそろそろダメかもしれん」

甘「そりゃ大変だなあ。がんばれ!」

三「……あ、ああ。うん、がんばる」

丕「ご要望どおり、熱いヤツだが。満足か?」

三「ダメだ! こいつは少し頭が足りん!」

甘「あー?」

丕「無駄とわかったのなら大人しく仕事をしていろ。一日何度発作を起こせば気が済む」

甘「お、三成、病気かなんかなのか? 桃やろっか?」

三「ある意味病気だ。桃はもらう」

丕「ここの病気だ」トントン

甘「頭かー。そりゃ大変なところだな、軍師さん」

三「頭ではない。全身だ」

甘「うおっ! 俺さっきお前に触っちまったじゃねえかよ! それってうつるんか?」

三「お前は少しうるさい。黙れ」

丕「どうした? お前はこういう熱いヤツを所望していたではなかったか」

三「ふん」

甘「なんだよ、そう邪険にすんなって。体調悪いのか? 俺が面倒見てやるって」

三「じゃあ、お前の足の速さを見込んで一つ頼みたいことがある」

甘「おう、まかせろ」

三「今、呉に身を寄せているはずの、俺の大切でこの世の秘宝であり財産であり天の使いでありどれほど金を積まれようとも代えることのできない……」

丕「玉璽が欲しいそうだ」

甘「玉璽かあ。そりゃムリだ」

三「左近だ! 左近を持ってこい!」

甘「左近? って、あの楽しそうなオッサンか?」

三「楽しそうかどうかは知らんがオッサンだ」

甘「アイツさ、よく『っほーう』って笑ってんだろ? 楽しそうだよなー!……で、なんでまたオッサンが欲しいんだよ」

丕「コイツの病気の原因はそのオッサンらしい」

三「左近が原因なのではなく、左近に会えないことが原因なのだ」

甘「なんで会えないと頭がおかしくなるんだよ?」

丕「……男好きなんだろう」

三「人をビ○チみたいに言うな! 別に男が好きなのではない。女が嫌いなだけだ。そして、左近が好きなだけだ」

甘「なんで?」

三「な……なんで?」

甘「なんでオッサンが好きなんだよ? オッサンって臭そうじゃねえか。女のほうがいいって」

三「ふ……、お前は左近の良さがわからぬのか。アイツはフェアリーだ」

甘「へえ!」

三「アイツから出る独特のフェロモンには中毒性があるに違いない。それに魅了された俺は、もう何日も何日も左近に会えずにその中毒症状に苦しんでいる。見ろ!」

甘「お?」

丕「枕に島左近の顔を書いて卑猥な人形にしようとしていたところを私が止めたのだが、壮絶な戦いだった」

甘「お……おお……」

丕「そして、この部屋の壁はなぜ黒いかわかるか?」

甘「……あ! すっげー小さい字で左近って書いてある!」

丕「部屋中それだ。机も、椅子も、窓も、布団も。私の顔にも書こうとするのだ、この男は」

三「わかるか! この俺の苦しみを!」

丕「わかるか。この私の苦労を」

甘「お、おお……」

三「お前が邪魔をするせいで!」ムキーッ

丕「貴様が仕事の邪魔をするせいで!」キャシャー!

三「他人の仲を引き裂くヤツはろくな死にかたをしないのだよ! お前は股が裂けて死ぬ!」

丕「私情で仕事を滞納するような人間は頭が爆発して死ぬ!」

三「お前もう黙れ!」

丕「うるさいさっさと仕事をしろ!」

三「なら左近を連れてこい! 俺は『ほら、働きすぎですよ。少しは休んでください』と諌める人間がいないと働きすぎで死ぬのじゃ!」

丕「働くだけ働いてとっととくたばれ!」

三「なんだと! そういうことは他人に向かって言っちゃいけないのだぞ!」

丕「少し我が身を振り返れクズ!」

三「クズ?! 俺の真似をするなミラクルクズ!」

丕「意味がわからんことを抜かすな! 仕事をしろ! 貴様のせいで何日私が寝ていないと心得る!」

三「そんなもの知るか……、ぐはっ!」ゴンッ

丕「ぬふあっ!」ゴンッ

甘「……あーあ、ったく、ギャーギャーうっせーっての。呉に連れてきゃ解決すんだろ?」ズルズル

三「ふ……、感謝す、る……」

丕「仕事を……」




甘「お前がオッサンだな!」

左「……え! 誰、この初対面で失礼な人! いやもういいや! はじめまして、オッサンの左近です! 引きずられているらしい人に見覚えがあってとってもイヤなんですけど!」

甘「ははっ! お前、やっぱり楽しそうなオッサンだな」

左「うっわあ! 初対面の人にやっぱり楽しそうとか言われちゃった」

三「左近……、会いたかった……!」バッ

左「やっぱり殿だ……!」ダッ

三「あ、待て左近、なぜ逃げる」

左「殿の顔によからぬことが書いてあるからです」

丕「三成ィー! 島左近に会ったから目的は果たした! 帰って仕事をしろ!」

三「ならぬ。俺は今晩左近とナイトフィーバーするからな」

左「そりゃないっすよ!」



甘「おーおー、なんだよ三成のヤツ。はえーなあ。意外と腕も立ちやがるし、こりゃ勝てねえなあ」






12/20
(曹丕ってどんな人だったっけ)